流体とスロースリップに駆動された能登半島群発地震  ―ソフトバンク独自基準点データを用いた地殻変動解析結果―

掲載日:2023-6-20
研究

 京都大学防災研究所西村卓也教授,金沢大学理工研究域地球社会基盤学系平松良浩教授,東北大学大学院理学研究科太田雄策准教授の研究グループは,GNSS(※1)データの統合地殻変動解析により,石川県能登半島の北東部で発生している群発地震は大量の流体(※2)(約 2,900 万 m3)が深さ 16 km 程度まで上昇し,地下の断層帯内を拡散したことにより,断層帯でのスロースリップ(※3)が誘発され,さらに断層帯浅部での地震活動も誘発されたことが原因と考えられることを示しました。

 本研究では,能登半島の既設の GNSS 観測点に加えて,京都大学と金沢大学による臨時観測点とソフトバンク株式会社(以下,ソフトバンク)による独自基準点のデータを統合解析することによって,最大で 7 cmの隆起を捉えるなど群発地震に伴う詳細な地殻変動の時空間発展を明らかにしました。これにより能登半島の地下で発生している現象の解明に貢献するとともに,日本列島の他の地域でも,かつてない高い空間分解能で微小な地殻変動を捉えられることを示唆するものです。

 本成果は,2023 年 6 月 12 日に国際学術誌『Scientific Reports』にオンラインに掲載されました。

 

 

 

図:能登半島の群発地震のメカニズムの模式図
 GNSSデータの解析から,地殻深部の流体が断層帯内を拡散することにより断層帯の膨張とスロースリップを引き起こし,さらにその浅部で活発な地震活動を長期にわたって引き起こしていることが示唆されます。

 

 

 

 

【用語解説】

※1:GNSS
 全地球衛星航法測位システム。人工衛星の電波を受信することで地球上の位置を正確に測定するシステムの総称。GNSS には米国や EU,ロシア,中国などによってそれぞれ運用されているシステムがあり,GPS は米国が運用する GNSS である。

※2:流体
 液体と気体の総称。地下深部における流体は,水,マグマやさまざまな種類のガスが考えられるが,能登半島深部での流体は水である可能性が高いと考えられる。

※3:スロースリップ
 断層が地震を起こすことなくゆっくりとすべる現象。
 

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Scientific Reports

研究者情報:平松 良浩

 

 

 

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