深海から浅海に適応したマシコヒゲムシの生態を7年間の潜水調査により解明!

掲載日:2023-5-10
研究

 金沢大学環日本海域環境研究センター鈴木信雄教授と小木曽正造技術専門職員,公立小松大学の平山順教授と渡辺数基博士,立教大学(前東京医科歯科大学)の服部淳彦特任教授と丸山雄介助教,北里大学の三宅裕志教授を中心とした共同研究グループは,深海から浅海に適応したマシコヒゲムシ(Oligobrachia mashikoi )(図 1)の生態を,7 年間にわたる継続的な潜水調査により,その特徴的な行動を明らかにしました。
 
 マシコヒゲムシには触手(※1)(図 2)があり,本研究では,その触手を棲管から伸ばしたり,引っ込めたりする行動を観察しました。さらに,このマシコヒゲムシの行動において海水温と光に依存した規則性があることを明らかにしました。特に,光に応答して触手を棲管に引っ込めるため,夜間により多くの個体が触手を伸ばしていることが分かりました。光に応答するという行動は,光が届かない深海から浅海への適応するためのマシコヒゲムシの戦略の一つであると考えられます。
 
 マシコヒゲムシは,シボグリヌム科に属します。この科に属する種の大部分は深海に生息していることから,これまでその生態について詳しく調べることが困難でした。一方で,マシコヒゲムシは,金沢大学環日本海域環境研究センター臨海実験施設が面する九十九湾の水深 7-24 m の浅海に生息しているため,その潜水調査が可能です。そこで小木曽技術専門職員が,自ら潜水し調査を実施しました。その結果,触手を伸ばす行動が海水温と照度に依存することが判明しました。また,夜間は昼間に比べて触手を伸ばす個体が多く,光を遮断すると昼間でも触手を伸ばす個体が増えることが分かりました。さらに,この触手の動きを制御する可能性がある,光受容タンパク質(ニューロプシン(※2))をコードする遺伝子を同定しました。
 
 以上の結果は,その多くが深海に生息するヒゲムシ類においても,浅海にすむことにより光や温度に応答することを世界で初めて証明した新知見です。

 本研究成果は,2023 年 4 月 18 日にイギリスの国際学術誌『Scientific Reports』のオンライン版に掲載されました。

 

 

【用語解説】

※1:触手
無脊椎動物の口や頭部の周囲に分布する伸縮が可能な糸状の小突起のことを言う。触手には,感覚器や呼吸器が備わっており,マシコヒゲムシは触手から酸素と共に,マシコヒゲムシに共生している細菌が利用する硫化水素を取り入れていると考えられている。

※2:ニューロプシン
光を受容するタンパク質の 1 種。ニューロプシンは紫外線に応答するオプシンで 360 nm の波長に吸収極大があり,360-400 nm の紫外線を吸収する。

図1:マシコヒゲムシの生態写真
棲管から触手を伸ばしている写真。本研究では,この触手を動かす行動を観察した。

 

図2:マシコヒゲムシの全長の模式図
触手は,酸素を取り入れると共に,細菌が利用する硫化水素を取り込むと考えられている。

 

 

プレスリリースはこちら

ジャーナル名:Scientific Reports

研究者情報:鈴木 信雄

 

 

   

 

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