脳内幸せホルモンが視えた
-オキシトシンを生きた脳内でとらえる蛍光センサーの開発-

掲載日:2022-9-26
研究

金沢大学医薬保健研究域医学系の西山 正章 教授と大阪大学大学院医学系研究科の共同研究グループは,神経ペプチド ”オキシトシン”(※1)を生きた動物の脳内から計測するための技術開発に成功しました。

オキシトシンは,幸せホルモンとも呼ばれる脳内物質であり,私たちの豊かな感情や心身の健康に重要な役割を果たしていると考えられています。しかしながら,生きた動物の脳内において,オキシトシンを感度よく捉えることは既存手法では困難であり,オキシトシンが脳内でどのように働いているかは,謎につつまれています。

今回,研究グループは,オキシトシンを高感度に検出可能な蛍光センサー(※2)を開発することにより生きた動物の脳内からオキシトシン動態を高感度に計測することを達成しました。これにより,脳内のオキシトシンを介した情報処理機構の基礎的な理解が進むことに加え,難治性の神経疾患の病態研究に新たな展開がもたらされることが期待されます。

オキシトシンは,自閉スペクトラム症(※3)や統合失調症(※4)といった難治性疾患を治療するための鍵として注目されており,本ツールの活用により病因解明や治療薬開発が大きく前進することが期待されます。本研究成果は,米国科学誌「Nature Methods」に,9月23日(金)午前0時(日本時間)に公開されました。

図1. 本研究の概要
研究分野における課題(左)と本研究におけるアプローチ(中央,右)を示している。本研究では,オキシトシンが脳内でどのように働いているかを明らかにすることを目指し,生きた動物の脳内においてオキシトシン動態を経時計測できる新規技術を開発した。

図2. 超高感度蛍光オキシトシンセンサーを用いた脳内オキシトシン動態の計測
急性ストレス刺激(テールリフト:左),個体間相互作用刺激(中央),自由行動下(右)におけるオキシトシン濃度の経時変化を計測した。刺激条件の違いによりオキシトシン変動の時間スケールが大きく異なっている。

 

プレスリリースはこちら

Nature Methods

研究者情報: 西山 正章

 

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