肝臓由来分泌タンパク質,ヘパトカイン「LECT2」の
抗ウイルス・自然免疫応答活性化作用を解明!

金沢大学医薬保健研究域保健学系の本多政夫教授,白崎尚芳助教,医薬保健研究域医学系の篁俊成教授,金子周一名誉教授,がん進展制御研究所の松本邦夫教授らの研究グループは,肝臓由来分泌タンパク質「LECT2 (※1)」がRIG-I (Retinoic acid-inducible gene-I) (※2) 依存性の自然免疫応答を活性化させることによりウイルス感染から生体を防御する機能的役割を有することを明らかにしました。

ウイルスに感染した後,ウイルスを排除するための生体防御機構として活性化されるのが自然免疫です。自然免疫はパターン認識受容体(pattern recognition receptor:PRR (※3))が病原体に由来する病原関連分子パターン(pathogen-associated molecular pattern:PAMP (※4))を認識することにより活性化されます。これまでに種々のPRRが同定されていますが,その中でもRIG-Iはインフルエンザウイルス,C型肝炎ウイルス,麻疹ウイルス,ジカウイルスなどヒトに病原性を引き起こすウイルスRNAを認識することが知られており,RIG-Iの活性化機構の解明はウイルス感染における生体防御機構を理解する上で非常に重要です。また,RIG-Iの活性化とがん疾患には密接な関係があることが分かってきています。

今回,本研究グループは,LECT2が肝細胞増殖因子(HGF)のレセプターMETと結合し,METの増殖シグナルを機能的に抑制する一方で,RIG-Iを活性化させ,抗ウイルス・自然免疫応答を活性化させることを明らかにしました。これらの知見から,LECT2は免疫制御因子であり,ウイルス感染症やがん疾患に対する新規治療標的となることが期待されます。

本研究成果は,2022年6月8日5時(米国東海岸標準時間)『Nature Communications』のオンライン版に掲載されました。

また,掲載論文の中でも特に優れた研究成果として,分野別の「Editors' Highlights」でも紹介されました。

本研究は,国立研究開発法人日本医療研究開発機構 肝炎等克服緊急対策研究事業(肝疾患に対する新規免疫制御機構に関する研究)の支援を受けて実施されました。

【用語解説】
 ※1 LECT2 (Leukocyte cell-derived chemotaxin 2)
 好中球走化性活性を持つタンパク質として同定された。現在では,LECT2は多機能タンパク質であることが示唆されている。

※2 RIG-I (Retinoic acid-inducible gene-I)
 自然免疫系で働くタンパク質の分子であり,ウイルスが細胞内に進入した時にウイルス由来のRNAを認識し,抗ウイルス作用を示すI型インターフェロン産生の誘導を引 き起こす。

※3 PRR (pattern recognition receptor)
 細菌やウイルスなどの微生物が持つ共通の分子パターンを認識する受容体であり,Toll様受容体,NOD様受容体,RIG-I様受容体,C型レクチン受容体などがある。

※4 PAMP (pathogen-associated molecular pattern)
 微生物特有(高等多細胞生物にはない)のパターン分子の総称。自然免疫を活性化する。

 

詳細はこちら

Nature Communications

研究者情報:本多 政夫
 研究者情報:白崎 尚芳
 研究者情報:篁  俊成
 研究者情報:金子 周一
 研究者情報:松本 邦夫

 

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