全国8地域からなる大規模認知症コホート研究で境界型糖尿病とアルツハイマー病との関連を報告

金沢大学医薬保健研究域医学系脳老化・神経病態学(脳神経内科学)の山田正仁名誉教授(現・九段坂病院副院長),医薬保健学総合研究科認知症先制医学講座の篠原もえ子特任准教授,九州大学らの共同研究グループは,健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究:JPSC-AD研究(※1)のデータを用いて,ヘモグロビンA1c(HbA1c)(※2)5.7~6.4%の境界型糖尿病(※3)とアルツハイマー病の罹病が関連することを初めて明らかにしました。

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標は低血糖のリスクを避けるためにHbA1c 7.0%程度とされていますが,本研究結果より認知症予防のためにはより十分な血糖コントロールが望ましい可能性が示唆されました。JPSC-AD研究では2016年から2018年にベースライン調査を実施し,全国8地域で11,410名の調査を行いました。2021年から2023年に同対象者について包括的認知症スクリーニング調査を実施し,新たな認知症の発症および認知機能の変化を調査する予定です。

今後,縦断研究を行うことで糖代謝異常がアルツハイマー病をきたす詳細なメカニズムを明らかにし,個々の認知症発症リスクに応じた予防・治療法の確立が期待されます。

本研究成果は,2022年1月4日に国際学術誌『Journal of Alzheimers disease』のオンライン版に掲載されました。

 

図1.HbA1cレベル別のアルツハイマー病と血管性認知症罹患の調整オッズ比

 

 

 

 

【用語解説】

※1 健康長寿社会の実現を目指した大規模認知症コホート研究(JPSC-AD)
2016年度より開始された全国8地域から抽出する地域高齢者1万人を対象に,認知症の要因・特性を持った群と持たない群に分け,疾患の罹患や改善・悪化の有無などを一定期間観察し,その要因・特性と疾患との関連性を明らかにする研究。
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※2 ヘモグロビンA1c(HbA1c)
ヘモグロビンは血液中の赤血球を構成するタンパク質であり,ヘモグロビンがブドウ糖と結びついたもののこと。過去の約1~2か月の平均血糖を反映すると言われている。本研究では全米グリコヘモグロビン標準化プログラム(National Glycohemoglobin Standardization Program:NGSP)値でHbA1c値を表記している。

※3 境界型糖尿病
血糖値が正常より高いが,糖尿病と診断するレベルではない状態のこと。

 

 

 

詳しくはこちら

Journal of Alzheimer’s disease

研究者情報:篠原 もえ子

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