平成28年度入学宣誓式学長告辞

掲載日:2016-4-7
ニュース 学長メッセージ

平成28年4月7日 いしかわ総合スポーツセンター

兼六園,石川門の桜が咲き誇る本日,晴れて金沢大学に入学した新入生の皆さん,おめでとうございます。金沢大学の教職員を代表してお祝いを申し上げますとともに,皆さんを心から歓迎致します。また,この日を心待ちになさっていたご家族の皆さまにも,心よりお祝いを申し上げます。

ただ今,学域入学生1,852名(1年生1,776名,編入生76名),大学院入学生749名,別科入学生31名の入学許可を宣言致しました。このうち,留学生は85名となっています。総勢2,632名の皆さん,皆さんは今日から金沢大学の学生です。これからの大学生活では,勉学に勤しんでいただくことはもちろん,素晴らしい先生方,職員,そして先輩,友人と出会い,貴重な体験を通して,人間として,未来の研究者として,専門職業人として大きく成長を遂げてくれることを願っております。

しかしながら,私たちを取り巻く周囲の状況の厳しさは,皆さんも十分に承知のことと思います。東日本大震災からの復旧・復興をはじめ,日本の国際競争力の復活や,少子高齢化と地域創成,資源・エネルギーの確保,宗教・民族対立など,我々は多くの課題に直面しています。これらの諸課題の解決には,人類の叡知を結集し,息の長い着実な取り組みが必要であります。立ち向かわねばならない課題が多くあればあるほど,困難であればあるほど,「大学で学ぶこと,大学院で学ぶことの意義」は大きく,重要となってくるはずです。若い皆さんに対する社会の期待も,当然大きなものがあります。

そこで皆さんに問いかけたいのです。胸膨らませて入学された皆さんは何に憧れ,何を期待して金沢大学に,あるいは大学院に入学されたのでしょうか?学士課程にあっては4年間あるいは6年間,大学で学ぶ目的は何なのでしょうか?選んだ専門分野の知識とスキルを体系的に身に付け,免許・資格の取得に向けて頑張る!それは当然ですが,それだけなのでしょうか?大学院課程にあっても,その目的は何なのでしょうか?さらに高度な知識を修得し,研究に従事する経験を経て学位を取得することはもちろんでしょうが,それだけなのでしょうか?純粋に皆さんご自身に問いかけてみてください。

その問いへの私の答えは,「己を磨く!」です。すなわち「人間としての己を磨き,専門人としての己を磨く,そしてグローバル人材としての己を磨く!」に尽きます。具体的な目標はどうあれ,これらこそが,皆さんの学ぶ目的の根底に据えるべきものではないでしょうか。そのためには,皆さん個々人が,何をどう考え,どんな学びの計画を立て,どう大学生活を過ごせば良いのかを自ら模索することが大切なのです。

大学での学びにおいては,今までの高校の授業とは違い,自分で学びたいものを自由に選択し,自己形成に励まなければなりません。自分で立てた学びの計画は,自分でその結果に責任を持たねばならないのです。ぜひとも,自問自答を繰り返し,悩んでください。迷って選択し,その結果,失敗することもあるでしょう。その失敗こそが諸君を強くしてくれます。決して失敗を恐れてはいけません。

自分の学ぶ目的,目標が定まり,それらの目標を達成するために「大学で学ぶ」という結論に到達したとき,皆さんに最も期待したいのは,何よりも大学に在学する間,「死に物狂いで学ぶ」ことです。単に知的好奇心を満たすだけに止まらず,物事の全容とそこに内在する課題を解決に導くことができるような,鋭い洞察力と卓越した予測の力を身に付けていただきたい。社会に出て活躍するには,知らないことがまだまだたくさんあることを自覚し,学ぶことに対するハングリーさ,飢餓感をもって,貪欲なまでに学び,己を高めていただきたい。

己を磨く!」の方針に沿って,自らの学びの計画を立てるためのヒントをもう少しお話ししましょう。

第一に,「人間としての己を磨く!」。皆さんには,人文科学,社会科学,そして自然科学の基礎知識・常識を積極的に学び,教養を深め,高い倫理観と,新しいアイディアを創造する力やそれを具現化する実践力など,いわゆる「人間基礎力」を磨いていただきたい。

本学は,金沢大学ブランドの人材育成を教育目標に掲げ,「金沢大学<グローバル>スタンダード」KUGS (Kanazawa University Global Standard)を定めています。これは本学で学んだ諸君一人一人が将来,社会に出て活躍する上で必要となる基本的かつ不可欠な素養,基礎力を5つの能力,「自己の立ち位置を知る」「自己を知り,自己を鍛える」「考え・価値観を表現する」「世界とつながる」,そして「未来の課題に取り組む」に絞り込み,本学が送り出す全ての卒業生が備えることを目指しています。グローバルスタンダード科目,いわゆるGS科目を30科目準備し,本年4月に設置した国際基幹教育院が実施する共通教育を通して,それらの基礎力を育み,皆さんを鍛え抜こうとするものです。

大学生活の中で,いろいろな人々と交わり,友人を作り,生涯の友を見つけてください。出会いと別れ,恋愛を経験して優しさと厳しさを合わせ持ち,他人の悲しみが理解できる深みのある人間として成長していただきたい。多くの感動体験が自分を磨き上げてくれます。また,他の人とは違う自分を見つけ,磨いていただきたい。それがやがては皆さん自身の個性,強みとなるはずです。特に,重要な決断をする際には,時間的,心理的な「ゆとり」を持つことに心がけていただきたい。それが創造性を育む上で大切だからです。

第二に,「専門人としての己を磨く!」です。金沢大学が伝統的な学部学科制を改め,学域学類制を導入し,8年が経過しました。以降,「経過選択制」や「副専攻制」を生かした自律的な学びを提供しています。専門の基礎を学びながら,自分の最終的な専門分野・コースを選択し,自ら作る「学びの計画」に沿って,専門の知識を深め,スキルを磨き,創造力を育み,己を鍛えていただきたい。

160407_03金沢大学は,日本においては持続的な競争力を持つ日本海側の基幹大学,世界においては教育研究成果をもって常に高い付加価値を生み出す,21世紀における世界の先端に位置する真のグローバル大学を目指しています。卓越した成果を創出している海外大学と伍して,卓越した教育研究,社会実装を推進する取り組みを中核とする国立大学であり続けるため,全教員,研究者が一丸となって,それぞれの分野で特色ある世界水準の研究成果の創出に日夜努力を重ねております。その世界最先端の研究成果を背景に,「国際的な教育研究システムの導入による国際通用性のある人材育成」「大学院を中心とする高度専門職業人や研究者の養成」「研究分野のさらなる強化と新たな強みとなる新領域・融合分野の形成」,そして「世界トップレベルの海外大学・研究機関とのネットワークの構築による国際競争力の強化」など,本学はさらなる機能強化に取り組んでおり,そうした教育研究環境で自分自身をどう鍛えるかは,皆さんお一人お一人の心構え,覚悟にかかっております。

迷うことなく己の進路と目標を定め,その達成に向けて日々研さんに努め,まい進することが大切です。大学にはそのための学びの自由があります。「大学での学び」は,教科書や文献で,教室や実験室で学ぶことのほか,社会や企業体験を始めとする国内外インターンシップ,先生方の国際ネットワークを活用した海外研究室でのラボトレーニングなどがますます重要な要素になっています。本学は,クラスにおいてもお互いが切磋琢磨しながら学びを深める「アクティブラーニング」を多く取り入れつつあります。国際的な専門職業人を目指し,最終的には自らよく考え,能動的に学ぶ姿勢,態度を身に付けることが,人生の成功へと皆さんを導いてくれるはずです。

そして第三に,「グローバル人材としての己を磨く!」です。世界を舞台に活躍し,世界との勝負に臨むには,異文化を理解し,受け入れる寛容性と総合的な人間力を鍛えることが大切です。まず国際コミュニケーション力,そして交渉力が必要です。次に高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,さらに実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれます。

金沢大学は平成26年度より文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU) に選定されています。10年間かけて大学・大学院教育,キャンパスの徹底した国際化を進めています。皆さんには,在学中に短期間の語学研修でもよいので,ぜひ,一度は海外留学を試みてくれることを期待します。日本国内にとどまっていては分からない,全く違う世界が広がっているからです。そのために,日頃から国際コミュニケーション力,英語による会話力を磨いてください。世界と交わるには,まず日本の文化,日本と世界の歴史を理解し,批判的思考力と歴史・文化に対する自分自身の価値観,世界観を持つことが大切です。

本学はこの4月から4学期制を導入しました。ぜひこの制度を活用して,できれば2回目は半年間,あるいは1年間の海外協定校での交換留学にチャレンジしてください。必ず,諸君の国際的な対応能力や隠れた能力を自己開発できるはずです。金沢大学は,現在,世界各地の大学・研究機関と国際交流協定を締結しており,その数は210以上に上ります。それらの協定を活用して,海外の大学に出かけたり,あるいは協定校から本学に来ている留学生と交流したりすることは,自分とは異なった文化的背景を持ち,異なった考え方や生き方,価値観を持った人たちと深く触れあい,刺激を受けるいい機会となります。こうした経験に皆さんは,時には思い悩むかもしれません。しかし,それは自らを大きく成長させる絶好の機会だと,私は信じています。

そしてスポーツや野外活動を通して基礎体力を付け,あらゆる困難に立ち向かう精神力を鍛え,グローバル人材として,それぞれが描く夢と志の実現に向け,世界に羽ばたく自分を創り上げてください。大学で学ぶ間,皆さん自身がぜひとも「厳しく己を律し,己を鍛え」ていただきたいと考えます。

さらに大学院へ入学した諸君にあっては,自由かつ批判的な精神と真摯な態度で研究課題に向き合い,研究活動を通して真理を追究する好奇心と喜びをぜひ,堪能していただきたい。それらの経験が社会に出たとき,研究者や開発技術者などとして成長するための礎となることでしょう。

150年以上の歴史と伝統を有する金沢大学で学ぶこと,また歴史・文化・創造都市金沢で学ぶことを誇りとし,教養豊かな未来の専門人,あるいは科学技術者として成長されることを祈念し,告辞と致します。

平成28年4月7日

金沢大学長 山崎 光悦

 

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