令和8年度科学技術分野の文部科学大臣表彰を,本学の教員2名が受賞しました。
科学技術分野の文部科学大臣表彰は,科学技術に関する研究開発,理解増進などにおいて顕著な成果を収めた者について,その功績をたたえることにより,科学技術に携わる者の意欲の向上を図り,もって我が国の科学技術水準の向上に寄与することを目的として,文部科学省が毎年実施しているものです。
受賞者と業績名は以下のとおりです。
<科学技術賞(研究部門)>
我が国の科学技術の発展などに寄与する可能性の高い独創的な研究または開発を行った研究者を表彰
●中田 光俊 医薬保健研究域医学系 教授
[業績名]覚醒下脳手術を起点とする脳機能研究
ヒトの高次脳機能はヒト特有であり,その神経基盤は複雑かつ個人差も大きいです。このため従来の研究手法では十分な高次脳機能神経回路の解析は困難でした。
中田教授は,ヒト脳に直接アプローチする脳神経外科医としての見地から,覚醒下脳手術中に得られる脳機能領域情報と経時的な高次脳機能検査データ,脳機能画像を統合する独自の研究手法を確立し,これまでに知られていなかった種々のヒト高次脳機能局在を明らかにしました。また,病態脳において脳病変が機能領域に及ぶ際,機能が他領域へ再編・移動する現象とその規則性を世界に先駆けて報告しました。さらに脳の白質解剖,脳画像解析を融合した独創的な研究により,機能移動の基盤となる新規の解剖学的構造および神経回路を発見しました。
本研究により,ヒト大脳の高次脳機能局在が明らかとなるとともに,健常状態における静的な機能局在研究から脱却し,脳神経回路の動的可塑性と多様性が証明されました。
本研究成果は,脳科学の学術的知見に留めず,高次脳機能障害の診断や治療に役立ち,覚醒下脳手術へ即時応用し社会に還元することから,国民福祉の向上に寄与することが期待されます。
●長谷部 徳子 環日本海域環境研究センター 教授
[業績名]熱年代学的手法の開発改良による地球環境の研究
地球表層環境の変動を明らかにする時には,閉鎖温度が低い手法を用いた熱年代学研究が用いられ,ウランの核分裂により鉱物中にできた傷を利用するフィッショントラック法がその代表です。ウランは,試料中に微量にしか含まれておらず同位体の定量が難しく,原子炉における中性子照射が利用されていました。しかし試料の放射化という問題があった上に,研究用原子炉の閉鎖により、測定の機会が失われました。
長谷部教授は,ウランの濃度・同位体測定に,LA-ICP-MS(レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析)を活用できることを初めて示しました。これにより放射性物質の取り扱いの必要がなくなり,また試料の放射能の減衰を待つ必要も無くなったことから実験時間の短縮・データの量産が可能となりました。
本研究により,ウランに限らず他の同位体濃度も同時に測定することにより,微量試料で複数の手法による放射年代測定が可能になりました。
本研究成果は,新しい鉱物,もしくは壊変現象を利用する年代測定法の開発を活発化させたとともに,地球史・表層変動史の理解,国土の安定性の議論に寄与することが期待されます。