Students' Sparks

異分野融合の力で血液疾患を解き明かす

医薬保健学総合研究科 保健学専攻 博士後期課程1年
安田 芽生YASUDA,Ibuki

HaKaSe+(ハカセプラス)選抜学生として、血液学に関する異分野融合の研究に取り組む、医薬保健学総合研究科保健学専攻博士後期課程1年(取材当時)の安田芽生さん。博士後期課程へ進んだきっかけや研究のやりがいについてお聞きしました。(インタビュー動画は公式研究instagramでご覧いただけます。)

現在、どのような研究をされているのですか?

 血栓止血の分野の研究に取り組んでいます。私たちの血液には、固まりすぎないようバランスを調整する「アンチトロンビン」というタンパク質が存在しています。研究のターゲットは、このアンチトロンビンが生まれつきうまく機能しない「遺伝性アンチトロンビン欠乏症」という日本の指定難病です。遺伝子の変異が原因ですが、なぜその変異が症状につながるのか、詳しいメカニズムはまだ解明されていません。

 私は、遺伝子変異をもとに細胞実験を行いながら、ナノ生命科学研究所(WPI Nano-LSI)が得意とするタンパク質をメッセンジャーRNA(遺伝子情報を細胞に伝える分子)レベルで解析する手法を組み合わせ、原因の究明を進めています。保健学と生命科学という異分野融合の研究です。さらに最近は、遺伝子変異の影響を受けずに患者さんの体内でアンチトロンビンを正常につくり出す、治療アプローチの可能性についても探っています。

なぜ博士後期課程に進学されたのか、そのきっかけを教えてください。

 漠然とですが、中学生の頃には「いつか大学院生になる」と決めていました。昆虫博士のような、何かを研究する人への憧れがあったのだと思います。小学生のときに祖父がガンを患い、医療の世界に関わりたいという気持ちも早くから芽生えていました。

 金沢大学医薬保健学域保健学類の検査技術科学専攻に進み、臨床検査技師の国家資格の取得を目指して学ぶ中で、血液学に興味を持ち、卒業研究で血液分野の研究室に所属しました。初めて本格的に研究に取り組み、実験に没頭する時間や結果が出たときの達成感がとても印象深くて、大学院へ進学することを決意しました。博士前期課程では別のテーマに取り組み、思うように進まない時期もありました。そのような中で、ナノ生命科学研究所(WPI Nano-LSI)と共同での研究が始まり、現在のテーマと出会いました。

 博士後期課程まで進学できたのはHaKaSeの支援が大きかったです。経済的な不安が減ったことで、進学を現実的な選択として考えられるようになりました。家族も応援してくれています。

研究で身に付けられたスキルはありますか?

 一番は、研究を自分で組み立てて進める力です。計画を立て、スケジュールを管理し、実行する力は、博士後期課程に入学してから特に求められるようになりました。また、ナノ生命科学研究所(WPI Nano-LSI)では外国人留学生とやりとりする機会が多いため、英語でのコミュニケーション力の向上にも独学で取り組んでいます。

HaKaSe+で役立った支援やプログラムを教えてください。

 まず何といっても経済的な支援です。アルバイトせずに研究に集中できる環境のおかげで、研究者としての今後のキャリアをじっくり見つめる時間も生まれています。年に1回の「異分野への扉」というプログラムでは、保健学専攻ではなかなか接点のない分野の研究者と話す機会があり、ほかの研究室の活動や最新の知見など、いろんな世界を知ることができます。

 今年はフィリピン・マニラへ1週間の留学もしました。WHO(世界保健機関)の地域事務局の一つであるWPRO(西太平洋地域事務局)をはじめとする国際機関において国際的に活躍する日本人の方から、アジアで問題となっている感染症や公衆衛生の課題などについてお話を伺えて有意義な時間でした。留学にかかる費用をHaKaSe+により支援され、海外渡航の金銭的な不安を取っ払ってくれたのはとてもありがたいです。

研究の気分転換はどうされていますか?

 音楽を聴くことが多いですね。幼い頃にエレクトーンを習っていたこともあって、歌詞よりも音そのものを楽しむ感覚があり、ピアノ演奏やインストゥルメンタル曲をよく聴きます。オーケストラを聴きに行くこともあります。最近は、同じ寮の後輩に勧められてアイドルの曲にもはまっています(笑)。

 時間があるときは、朝早く起きてコーヒー豆を挽いて一杯淹れるのも楽しみの一つです。カフェに足を運ぶことも。研究の合間のリフレッシュは大切ですし、コーヒーには脳を落ち着かせてくれる効果があるように感じます。

最後に、今後の目標や将来の夢を聞かせてください。

 保健学では、患者さんの検査データや症状をもとに疾患の推測を行うので、医療と基礎研究の中間に位置すると思っています。その意味でも、医療と基礎研究をつなぐ橋渡し役になることが私の目指す研究者像です。ナノ精密医学・理工学卓越大学院プログラム(Hakase+ for WISE)に保健学専攻から初めて選ばれたパイオニアとして、将来の治療薬の開発につながる基礎的データを報告できるよう、頑張りたいですね。

 将来は、一人で研究を進めるというよりも、学生をしっかり指導できる、大学教員のような研究者になりたいとの思いがあります。そのためにはまず自分が研究者としてのスキルや経験を身につける必要があります。企業や海外でのキャリアを経てからアカデミアに戻り、自分の研究を次の世代に引き継いでいけるような存在になれたらと考えています。

※所属・学年・年次などはすべて取材当時のものです。ご了承ください。

(ライター・木戸 珠代)

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