思春期特発性側弯症(AIS)の原因遺伝子LBX1が側弯を引き起こす仕組みを解明

160129_02 lbx1bの発現量(GFP intensity: 右)に相関して,
体軸の弯曲の程度が重度になる(左)ことが示された。

学際科学実験センターの堀家慎一准教授,広島大学,京都大学および理化学研究所の研究グループは,思春期特発性側弯症(※1)と強く相関する一塩基多型(SNP)(※2)rs11190870のリスクアレル(危険対立遺伝子)が,近傍にあるLBX1遺伝子(※3)の発現を上昇させることを明らかにしました。また,ヒトLBX1とそのゼブラフィッシュ相同遺伝子(lbx1a,lbx1b,lbx2)の過剰発現が,ゼブラフィッシュの体軸変形を引き起こす原因になることを示しました。さらに,lbx1bをゼブラフィッシュの筋肉以外の内在性発現領域でモザイク状に発現させると,脊椎骨の奇形を伴う側弯と脊椎骨の形態異常を伴わないAISによく似た側弯が誘導されることが分かりました。今回の結果は,思春期特発性側弯症の治療法の確立につながることが期待されます。

本研究の成果は,1月29日に「PLOS Genetics」(米国科学雑誌)オンライン版に掲載されました。

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内在性エンハンサーを用いてモザイク状にlbx1bを発現させると,椎骨奇形を伴う側弯(CS,上段)や,椎骨奇形を伴わずに成長に伴って体軸が弯曲するAISに似た側弯(下段)を示す個体が観察された。

 

 

※1 思春期特発性側弯症(AIS)

原因が不明なことを医学用語で特発性という。側弯症にはさまざまな原因によるさまざまなタイプのものがあるが,そのほとんどは原因が不明の特発性側弯症と総称されるタイプの側弯症である。特発性側弯症の中でも最も頻度が高いのが,思春期(小学校後半から中学生)に発症する思春期特発性側弯症(Adolescent Idiopathic Scoliosis)と称されるタイプである。女子に多くみられ,男子と比較すると約5~7倍の患者数とされている。

 

※2 一塩基多型(SNP)

Single Nucleotide Polymorphismの略称。ヒトゲノムは,遺伝情報を示す約30億ついの塩基配列を含んでいるが,その配列は個人間で異なっている。その配列の多様性(Variation)を遺伝子多型と呼ぶ。遺伝子多型の中で,4種類ある塩基のうちの一つの塩基がほかの塩基に置き換わったタイプのもの(例えばあるGがAに,TがGにといったように)を一塩基多型(SNP)という。

 

※3 LBX1遺伝子

LBX1(ladybird homeobox 1)は,胚発生において重要な役割を果たすホメオボックス型転写因子の一つ。ヒトでは胎児期および成人の脊髄や筋肉で発現が確認されており,これまでに感覚神経や筋肉の発生に関与することが報告されている。

詳しくはこちら

PLOS Genetics

研究者情報:堀家 慎一

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