平成29年度入学宣誓式学長告辞

掲載日:2017-4-7
ニュース 学長メッセージ

平成29年4月7日 いしかわ総合スポーツセンター

兼六園,石川門の桜が咲き誇る本日,晴れて金沢大学に入学した新入生の皆さん,おめでとうございます。金沢大学の教職員を代表してお祝いを申し上げますとともに,皆さんを心から歓迎いたします。また,この日を心待ちにされていたご家族の皆さまにも,心よりお祝いを申し上げます。

ただ今,学域,大学院,別科を合わせて2,598名の皆さんの入学許可を宣言しました。皆さんは今日から金沢大学の学生です。これからの大学生活では,勉学に勤しむことはもちろん,素晴らしい先生方,職員,そして先輩,友人と出会い,貴重な体験をとおして,人間として,専門職業人として,あるいは未来の研究者として大きく成長を遂げてくれることを願っております。

そのためには,まず現状認識が重要です。皆さんを取り巻く世界の状況は,今,まさに大きな変革期を迎えています。民族対立と移民問題など国際情勢は激動し,頻発する国際テロによって世界の平和が脅かされるさなか,英国のEU離脱や米国トランプ大統領の出現など,ポピュリズム,大衆迎合主義がまん延し,持続的な発展を阻害する地球規模の多くの課題に直面しています。国内では,次々に起こる日本を代表する大企業群の破綻によって,モノ造り大国であった日本の国際競争力が一段と低下し,少子高齢化をはじめ山積みする社会課題が眼前に迫り,わが国の経済成長は,先行き不安定な状況にあります。

一方,全ての物をネットワークで結合して得たデータを活用するIoT(Internet of Things)技術や,第4次産業革命を巻き起こす取り組みが,社会全体を巻き込んだ総力戦によって展開されようとしています。日本が掲げる超スマート社会の実現Society5.0も含め,ビックデータと人工知能,AI,自動運転など,未来社会の実現に向けた新しいモノ造りやサービスの提供,新しいビジネスモデルが次々と生まれようとしております。

立ち向かわねばならない,こうした未来課題が多くあればあるほど,困難であればあるほど「大学で学ぶこと,大学院で学ぶことの意義は大きく,重要」となってくるはずです。若い皆さんに対する社会の期待も,当然大きなものがあります。

そこで皆さんに問いかけたいのです。胸膨らませて入学された皆さんは何に憧れ,何を期待して金沢大学に,あるいは大学院に入学されたのでしょうか?学士課程にあっては4年間あるいは6年間,大学で学ぶ目的は何なのでしょうか?選んだ専門分野の知識とスキルを体系的に身に付け,免許・資格の取得に向けて頑張る!それは当然ですが,それだけなのでしょうか?大学院課程にあっても,さらに高度な知識を修得し,研究に従事する経験を経て学位を取得することはもちろんでしょうが,それだけなのでしょうか?純粋に皆さんご自身に問いかけてみてください。

その問への私の答えは,「己を磨く!」です。すなわち「人間としての己を磨き,専門人としての己を磨く,そしてグローバル人材としての己を磨く!」に尽きます。

さらに皆さんに問いかけたい。「しかし,何を目的とし,何を達成するために,己を磨かなければならないのか?」このことを各自,自問自答してほしい。

専門力を磨き,それを活用して大成したい,幸せに暮らすために安定した収入を得たい,世界を舞台に活躍したい,地域コミュニティに貢献したいなど,それぞれの夢の実現に向け努力されることを大いに期待しますが,それ以上に社会の一員として,わずかでもいい,その持続的な発展と人類の幸福に貢献しなければならないことを,肝に命じてほしい。一人一人がそう自覚することで,理想の未来社会の実現に近づくことができます。

さて,具体的な個々の達成目標はどうあれ,己を磨くことこそが,皆さんの学ぶ目的の根底に据えるべきものです。そのためには,皆さん個々人が,何をどう考え,どんな学びの計画を立て,どう大学生活を過ごせば良いのかを自ら模索することが大切です。高校までの授業とは違い,大学では,学びたいものを自分で選択できる自由度が突然に広がります。自分で立てた学びの計画は,自分でその結果に責任を持たねばならないのです。学ぶ目的,達成目標をどう定めるのか,自問自答を繰り返し,悩んでください。今から,自己形成・キャリア形成を意識した学びの選択が必要です。

自分の学ぶ目的,目標が定まり,それらの目標を達成するために「大学で学ぶ」という結論に到達したとき,皆さんに最も期待したいのは,何よりも「死に物狂いで学ぶ」ことです。単に知的好奇心を満たすだけに止まらず,物事の全容とそこに内在する課題を解決に導くことができるような,鋭い洞察力と卓越した予測の力を身に付けていただきたい。社会に出て活躍するには,知らないことがまだまだたくさんあることを自覚し,学ぶことに対するハングリーさ,飢餓感をもって,貪欲なまでに学び,己を高めていただきたい。

「己を磨く!」の方針に沿って,自らの学びの計画を立てるためのヒントをもう少しお話しましょう。

第一は「人間としての己を磨く!」ことです。皆さんには,人文科学,社会科学,そして自然科学の基礎知識・常識を積極的に学び,教養を深め,高い倫理観と,新しいアイディアを創造する力やそれを具現化する実践力など,いわゆる「人間基礎力」を磨いていただきたい。

本学は,金沢大学ブランドの人材育成を教育目標に掲げ,「金沢大学<グローバル>スタンダード」KUGS(Kanazawa University Global Standard)を定めています。将来,社会に出て活躍する上で必要となる基本的かつ不可欠な素養,基礎力を5つの能力,すなわち「自己の立ち位置を知る」「自己を知り,自己を鍛える」「考え・価値観を表現する」「世界とつながる」,そして「未来の課題に取り組む」とし,本学が送り出す全ての卒業生が備えることを目指しています。グローバルスタンダード科目,いわゆるGS科目を30科目準備し,国際基幹教育院が実施する共通教育をとおして,それらの基礎力を育み,皆さんを鍛え抜こうとするものです。 

本学は,クラスにおいてもお互いが切磋琢磨しながら学びを深める「アクティブラーニング」を多く取り入れつつあります。自らよく考え,能動的に学ぶ姿勢,態度を身に付けることが,やがて人生の成功へと皆さんを導いてくれるはずです。

第二は「専門人としての己を磨く!」ことです。本学独自の学域学類制は「経過選択制」や「副専攻制」による自律的な学びを可能にします。専門の基礎を学びながら,自分の最終的な専門分野・コースを選択し,自ら作る「学びの計画」に沿って,専門知識を深め,スキルを磨き,創造力を育み,そして己を鍛えていただきたい。

金沢大学は,国が進める国立大学の機能強化の3つの枠組みから,「卓越した成果を創出している海外大学と伍して,全学的に卓越した教育研究,社会実装を推進する大学」,いわゆる世界卓越型を選択しました。これは国際通用性のある人材育成,大学院教育の高度化,そして国際ネットワーク構築などをとおして世界一流の教育研究拠点の形成を目指すことを宣言したものです。卓越した教育研究を推進する国立大学であり続けるため,全教職員,研究者が一丸となって,それぞれの分野で特色ある世界水準研究成果の創出に日夜努力を重ねております。そうした教育研究環境の中で自分自身をどう鍛えるかは,皆さんお一人お一人の心構え,覚悟にかかっています。

「大学での学び」は,教科書や文献で,教室や実験室で学ぶことのほか,社会や企業体験をはじめとする国内外でのインターンシップ,先生方の国際ネットワークを活用した海外研究室でのラボトレーニングなどがますます重要な要素になっています。巡ってくるチャンスを的確に捉え,多くの感動体験をとおして他の人とは違う自分を見つけ,磨いていただきたい。それがやがては皆さん自身の個性,強みとなるはずです。特に,重要な決断をする際には,時間的,心理的な「ゆとり」を持つことに心がけていただきたい。それが創造性を育む上で大切だからです。

そして第三に,「グローバル人材としての己を磨く!」ことです。世界を舞台に活躍したい諸君も,地域コミュニティに貢献したい諸君も,自国の文化を背景に異文化を理解し,受け入れる寛容性と総合的な人間力を鍛えることが大切です。国際コミュニケーション力,交渉力,そして高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,さらに実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれます。

金沢大学は平成26年度より文部科学省のスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)に選定されています。10年間かけて大学・大学院教育,キャンパスの徹底した国際化を進めています。皆さんには,在学中に,短期間でもよいので,一度は海外留学に挑戦していただきたい。海外には,日本国内にとどまっていては分からない,全く違う世界が広がっているからです。そのために,日頃から国際コミュニケーション力,英語による会話力を磨いてください。世界と交わるには,まず日本の文化,日本と世界の歴史を理解し,批判的思考力と歴史・文化に対する自分自身の価値観,世界観を持つことも大切です。

金沢大学は昨年から4学期制を導入しています。これを活用して海外留学にチャレンジしてください。今は,トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラムをはじめとする奨学金が充実しています。大学では,独自の奨学金も準備して皆さんの留学を応援しています。本学は世界各地の大学・研究機関と国際交流協定を締結しており,その数は220以上に上ります。そうした協定校との交換留学プログラムや,本学独自の短期留学プログラム,そして国際インターンシッププログラムなどに,多くの先輩たちが参加しています。それらの機会を活用して海外の大学に出かけたり,あるいは本学に来ている留学生と交流したりすることは,自分とは異なった文化的背景を持ち,異なった考え方や生き方,価値観を持った人たちと深く触れ合い,刺激を受ける良い機会となります。さらに,諸君の国際的な対応力や隠れた才能を伸ばし,自らを大きく成長させる絶好の機会となると,私は信じます。決して失敗を恐れてはいけません。挫折を経験することが諸君を精神的に強くしてくれます。未来はやってくるものではなく,自分で切り拓くものです。大学で学ぶ間,皆さん自身が是非とも「厳しく己を律し,己を鍛え」ていただきたい。

さらに大学院へ入学した諸君にあっては,自由かつ批判的な精神と真摯な態度で研究課題に向き合い,研究活動をとおして真理を追究する好奇心と喜びを是非,堪能していただきたい。それらの経験が社会に出たとき,研究者や開発技術者などとして成長するための礎となることでしょう。

150年以上の歴史と伝統を有する金沢大学で学ぶこと,また歴史・文化・創造都市金沢で学ぶことを誇りとし,教養豊かな未来の専門人,あるいは科学技術者として成長されることを祈念し,告辞といたします。

平成29年4月7日

金沢大学長 山崎 光悦

 

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