テーマ「“私たちの金沢大学”に期待すること」
山崎光悦学長 × 金沢大学のステークホルダー(平成28年7月9日)

中村健一氏〔中村留精密工業機械株式会社 社長〕

中村 産業界は大変厳しい状況に置かれ,企業としては産学で連携した強さを重視している。特に,地元企業としては金沢大学に期待する面が大変大きい。グローバル人材,優秀な人材を求めるのと同時に,教員には,共同開発をより積極的に行って欲しいと思う。レベルの高い教員に対して理解を持って協力したい。また,金沢大学が高い評価を得られるように,われわれも地域企業として応援したいと思っている。

山崎 目標を高く掲げて教育研究等に一層努力したい。
地元企業との共同研究については,工作機械に注目している。北陸は工作機械メーカーが多いのが特徴なので,今後さらに強化できると思っている。日本のナショナルセンターとして次世代を担う存在になれるよう,取り組みたい。

 

池島裕之氏〔PFUビジネスフォアランナー(株)取締役副社長〕

池島 グローバル化の取り組みとして金沢大学が目指す指標を教えて欲しい。

山崎 世界・各地域・各分野で活躍する人材育成の取り組みの一つであるインターンシップの 開発・実施を今後さらに広く展開して行きたいと考えている。また,指標の一つとして,平成26年度採択された文部科学省SGU事業で推進しているさまざまな取り組みにより,10年後には,2,000人の留学生を受け入れることを目標としている。そのためにも,大学院での英語による授業の割合を原則100%にしたいと考えている。また,学生の半分くらいは留学させたいとも考えている。大学院としては,海外の企業とのラボローテーションを増やすことを考えている。

※SGU:スーパーグローバル大学創成支援事業

池島 金沢大学の航空宇宙研究について教えて欲しい。

山崎 本学の宇宙理工学は,観測するグループと宇宙の電波を探るグループがある。現在,さまざまなチャレンジを行っており,平成36年には小衛星を打ち上げる計画で進めている。学生には日本の航空宇宙開発政策を担う研究・開発機関に進んでもらいたいと願っている。

 

宮﨑栄治 氏〔石川県高等学校校長会 会長(金沢泉丘高等学校 校長)〕

宮崎 SSH,SGH,SPHや教育ゼミナール等において,教員・学生に協力してもらっている。また,県内の教職員は金沢大学出身者が多く,発足した教職大学院に大変期待している。教員の人材育成に関してどのようなビジョンをもっているのか教えて欲しい。

※SSH:スーパーサイエンスハイスクール
※SGH:スーパーグローバルハイスクール
※SPH:スーパープロフェッショナルハイスクール

山崎 連携ゼミや学校教育アドバイザー等の教員による支援事業をさらに充実させるとともに,石川師範塾との連携や新しい推薦制度の導入等,より実質化した形で石川県教育委員会との連携プログラムを開発し,優秀な学生を県内に呼び込むようなことを考えていきたい。

 

持木一茂 氏〔能登町長〕

持木 小木小学校は国の補助を受けて海洋教育のモデル校となっている。また,能登町には県の水産センターや臨海実験センターがあり,海洋教育には適した環境である。しかし,まだ海洋調査については遅れているため,金沢大学には,能登を環境調査の拠点として活用していただきたいと願っている。

山崎 学類改組の検討の中で,生命理工系の学類設置についても検討しており,既に人員を小木に着任させている。本学が地域に対してお願いしたいことは,施設に関する支援。一方,本学は,小学校教育等の協力ができる。大学と地域の相互協力が必要である。なお,本学の臨海実験施設は,全国の教育関係共同利用拠点施設として,他大学も利用しており,交流人口に貢献できている。また,水産学の他に観光学についても検討しており,引き続き,地域の協力をお願いしたい。

 

仁田知樹 氏〔JICA北陸支部 支部長〕

仁田 我々JICAに対し,発展途上国との学術交流,研修生の受け入れ等,さまざまなプログラムで協力いただいている金沢大学は,現在,国際化を改革の柱として推進している。私たちも支援できればと思っており,金沢大学と連携協定について検討できればと考えている。

山崎 本学としても,是非,連携協定の早期締結を目指したい。

 

山出 保 氏〔金沢大学学友会 会長(石川県中小企業団体中央会 会長)〕

山出 金沢大学の魅力の一つとして,高校生や社会が引き付けられる,多少ドキッとするような特徴的なものがあってもいいのではないか。
共通テストには疑問を感じている。例えば,アーティストとか直木賞候補者とかが参画するような,大学の独自性を打ち出した取り組みを期待している。

山崎 大学のブランディングの一つとしては国際化を掲げている。「金沢大学の出身者はみんな英語が話せる」というようなことが定着できれば良いと思っている。平成35年度からの入試方法の変更に備え,さまざまな検討を行っているところであり,いくつか特徴的なことを導入したいと考えている。既に公表している文系一括入試と理系一括入試の他に,文系理系を問わない入試についても検討している。また,特定の能力に秀でる生徒を入学させ世界に輩出することやトップエリート人材を地域に残すことも使命だと思っている。
本学独自の個別入試については,求める生徒像に対し大学としての理念をもって,一括入試等ならびに人物評価や高校での活動評価等のさまざまな視点で検討している。また,高大接続システムの一つとしては,平成28年度に採択された文部科学省GSC事業の推進がある。

※GSC事業:グローバルサイエンスキャンパス事業

山出 事務局には,教員と協働して,入試前の高校回りや就活に向けた企業回りを行って欲しい。

山崎 法人化後,毎年予算が1%ずつ削られ競争的資金に回されている。教員数は増えているものの競争的資金には期限があるため雇用環境としては厳しい状況である。そのような状況の中でも,事務局は積極的に教員と協働している。

山出 金沢大学環日本海域環境研究センターは,幅広い研究分野なので,同センターの研究を大学全体のテーマにして,独自性を出してはどうかと思う。

山崎 本学の環日本海域環境研究センターは,文部科学省の共同利用・共同研究拠点に採択されたばかりであり,現段階では,環境計測に重点を置いている。日本の環境センターとしてトップに立てるよう,海外とのネットワークを強化・拡張し,その研究成果を社会に還元したいと考えている。その上で,幅広い研究分野への拡張も視野に入れていく。

 

小森 貴 氏〔金沢大学十全同窓会 副会長〕

小森 文部科学省の公募事業の採択状況を見ると,きちんとテーマを整理し,公募要領のポイントを押さえて申請している大学が採択されている。金沢大学の各教員は素晴らしい研究を行っておりチャンスはあるのだから,大学内で情報を共有して,皆の知恵を集めて,採択比率をあげてもらいたいと思っている。

山崎 5~6年前からURAを10名程採用し,データを一箇所に集め精査させた上で,チームで,公募事業の申請を行っている。一昨年から2年続けて,メディア(サンデー毎日)の外部資金採択ランキングにおいて国立大学で2位になった。今後は,公募事業内容に迅速に対応して,詳細な情報をいち早く取りに行く必要があると思っている。

※URA:リサーチ・アドミニストレーター(大学等における研究マネジメント人材)

 

中村雅人 氏〔金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校育鳳会 会長〕

中村 県外に進学した学生もいつかは金沢に戻って来てほしいと思っている。魅力あるまちづくりに対して,金沢大学が取り組んでいることがあればご紹介して欲しい。

山崎 学問的には各分野で,例えば地域の政策課題に関与する取り組みを行っている教員が多数いる。連携協定を結んでいる複数の自治体と地域の特色を生かしながら活動している。また,地域にある企業との連携も重視しており,ネットワーク群としての連携も考えている。
今は特にCOC事業で,さまざまなプロジェクトを推進している(現在21プロジェクト)。
また,昨年度からCOCプラス事業も開始し,県下の8大学と全自治体と関係企業とでネットワークを構築し,インターンシップの拡充・実施等に取り組んでいる。地域の魅力を学生に理解してもらい,5年間で就職率が10%アップすることを目標に掲げ,推進している。

※COC事業:文部科学省「地(知)の拠点整備事業」
※COCプラス事業:文部科学省「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」

 

平成28年7月9日(土)開催
金沢大学ステークホルダー協議会より

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