
令和6年1月1日に発生した令和6年能登半島地震及び令和6年9月に発生した奥能登豪雨により、能登半島を中心に、各地で甚大な被害が生じました。被災された全ての皆様に、心よりお見舞い申し上げます。一日も早い復旧・復興・再建に向け、石川県に立地する総合大学として尽力してまいります。
発災直後から、金沢大学が持つあらゆる力を結集し、初期の災害対応に取り組んでまいりました。令和6年1月末には「能登里山里海未来創造センター」を設置し、中長期的な視点で「地震・災害に強く安全・安心で、だれもが住みよい、文化薫る地域・まちづくりとひとづくり」に寄与し、被災地に寄り添い、震災復興に当たる体制を構築しました。「オール金沢大学で『未来知』により社会に貢献する」という揺るぎない理念並びに「志」の下、「未来知」を結集し、能登で新しい価値を創造し、未来の社会の姿を示すことに加え、その姿を国内外へ発信します。これらを通じて、アカデミアとして震災復興に尽力し続けます。
金沢大学未来ビジョン「志」の策定
金沢大学は、1862(文久2)年に創設された加賀藩彦三種痘所を源流とし、旧制第四高等学校、石川師範学校、石川青年師範学校、金沢高等師範学校、金沢医科大学、金沢工業専門学校などの前身校の歴史と伝統を受け継ぐ総合大学です。
私が令和4年4月に金沢大学長を拝命した後、諸先輩が築き上げてきた歴史を礎に、金沢大学憲章に掲げる「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」という基本理念に立脚して、金沢大学の揺るぎない未来ビジョン「志」を策定し、同年5月に学内及び社会に示しました。
金沢大学が目指すビジョン「志」は、地域と世界の2つの視点を互いに往還させながら、現在の課題を解決するとともに、未来の課題を探求し克服する知恵「未来知」により社会貢献を果たすことです。
「志」として掲げる未来知による社会貢献に向け、研究、教育、経営のあるべき姿を掲げます。具体的には、研究面では「独創的な世界トップレベルの研究展開による世界的研究拠点群の拡充」、教育面では「国際社会の中核的リーダーたる“金沢大学ブランド人材”の輩出」、経営面では「人・知・社会の好循環を作り出す持続可能で自律的な運営・経営の実現」です。
これら3つのあるべき姿は、互いに密接に関連します。研究と教育が互いに好影響をもたらすポジティブループを形づくり、同時に確固たる経営・マネジメントがその基盤を支えます。3つの機能を一体とし、「志」として掲げる未来知により社会に貢献する、これが金沢大学の目指すビジョンです。
基本理念のもと、揺るぎない未来ビジョン「志」を明確にし、研究、教育、経営それぞれのあるべき姿を掲げました。そのビジョンに向け、“いま”金沢大学が何を為すべきかというミッションと、“いま”金沢大学が何を行うのかという個々のアクションプランを掲げました。
「志」策定後の取組
金沢大学未来ビジョン「志」を公表してから約4年が経ちました。「志」の実現に向けて、学生、教職員がそれぞれの立場を超え、互いの尊重と協働のもと「オール金沢大学」で取り組んできました。その努力は、研究、教育、経営ともに実を結んでいます。
独創的な世界トップレベルの研究展開による世界的研究拠点群の拡充に向け、統合創成研究環のもと、文理医の緊密な連携により基礎研究、応用研究、社会実証研究を通じた「未来知による社会貢献」を加速しています。令和5年度に「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択され、文理医融合による非連続なイノベーションを起こす世界的拠点の形成を具体化しています。本学が100%出資するベンチャーキャピタル「株式会社ビジョンインキュベイト」が運用を開始しました。令和7年度には実証研究の中核となる「未来知実証センター」も本格稼働し、基礎研究から文理医融合研究、実証研究、社会実装まで一気通貫の支援体制を構築しました。令和8年度に「先端研究基盤刷新事業(EPOCH)」に採択され、研究基盤の刷新モデルを構築し、全国・世界へ展開します。国際ラボやEXPERT-J等を通じて、国際的なコミュニティを形成し、組織的な国際共同研究が進んでいます。グローバルな研究大学として研究力を高め、社会実装を進めることで、さらなる社会貢献をしていきます。
国際社会の中核的リーダーたる金沢大学ブランド人材の輩出に向け、未来創成教育環のもと、KUGSを基軸とした初等中等教育から大学院まで一貫した教育・支援システムを構築しています。令和5年度に「次世代科学技術チャレンジプログラム」(小中高型)に採択され、小中高校生・高専生を対象とした長期的かつシームレスな育成プログラムを提供しています。同年には、本学でG7富⼭・⾦沢教育⼤⾂会合エクスカーションが⾏われました。G7各国の⼤⾂、国際機関の代表者が訪れ、学⽣、⽣徒、教員と直接対話する⼤変貴重な機会を実現することができました。令和6年度に「大学の国際化によるソーシャルインパクト創出支援事業」に採択されました。国際が日常にある、日常が国際である大学に向けた国際化が進んでいます。国際日本研究教育センターが中心となり、日本語教育、伝統文化等を軸にした多文化共修を展開しています。令和7年度に「未来を先導する世界トップレベル大学院教育拠点創出事業(FLAGs)」に採択され、大学院教育先導機構の下、新たな価値を創造する博士人材を育成しています。より多くの学生が大学院進学を決意し、博士課程での研鑚を積むために、博士研究人材支援・研究力強化戦略プロジェクト(HaKaSe+)の取組も推進しています。
人・知・社会の好循環を作り出す持続可能で自律的な運営・経営の実現に向け、教職員が協働して、先駆的・戦略的な改革を推進しています。令和4年度「国立大学経営改革促進事業」に採択され、複数の世界的研究拠点を有するグローバルな研究大学というあるべき姿にむけて、人への投資、プロジェクトの推進を強力に進めていく基盤を構築してきました。また、北陸経済連合会のコーディネートのもと、本学を含む北陸地区の4つの国立大学が共同で運営を行う「北陸未来共創フォーラム」を一層充実させます。本組織を通じて、産学官連携によるオープンイノベーションを加速させていきます。あわせて、持続可能な経営を支える基盤として、コンプライアンスの徹底とリスクマネジメント体制の強化を進めています。研究・教育の健全性や情報セキュリティをはじめとする課題に、全学的な体制で対応します。
能登半島地震からの創造的復興に向けて、能登の復興を起点に日本の未来をつくるオフグリッド集落「未来知MITSUKEプロジェクト」の構築が進んでいます。少子高齢化・過疎化が進行する課題先進地における自立分散型コミュニティモデルを構築し、各地に展開していきます。また、令和7年度から「防災・復興人材特別プログラム」を開始し、国内外の復旧・復興と防災・減災に貢献できる人材を育成しています。
これらの成果は、金沢大学があるべき姿となるための通過点です。「志」の実現に向けて不断の改革を図るため、「志」の策定、ミッション及びアクションの実行、毎年度の自己点検評価及び結果を踏まえた見直しというPDCAサイクルが定着しています。今回の改訂は、第5期中期目標・中期計画を見据えて行うものです。2040年に目指す姿である「未来知により非連続なイノベーションを創出し、新たな価値を創造し続ける大学」の実現に向け、構成員一同、研究大学として研究・教育に邁進します。
社会の皆様からのご理解とご協力、並びに叱咤激励を心からお願い申し上げます。

