Researcher’s Voice #3
古寺 哲幸 教授
ナノ生命科学研究所

画期的な顕微鏡法でタンパク質研究を深める

 

古寺 哲幸 教授

◆所 属:ナノ生命科学研究所

◆専 門:生物物理学

生物物理学研究室

 

高速AFMで生体分子のありのままの姿を捉える

金沢大学ナノ生命科学研究所の安藤敏夫特任教授が開発した高速原子間力顕微鏡(高速AFM)は,10億分の1メートル(ナノメートル)レベルの極めて小さなサイズの探針で試料表面をなぞることで,生体分子表面の凹凸を非常に細かく観察することができます。さらに,高速AFMの探針は溶液中でも使用できることから,生体分子が働く生理的条件の下で,ナノメートルの世界で働くタンパク質や酵素などの形と動きを同時にビデオ観察できる画期的な顕微鏡です。

 

 

 

高速AFMでタンパク質の振る舞いを解き明かす

高速AFMの優位性を実証したのは,モータータンパク質の一種である「ミオシンⅤ」の観察です。2本の脚状の構造を持つミオシンは,細胞内でアクチン繊維に沿って移動しながら,膜小胞や伝令リボ核酸(mRNA)などの荷物を運搬するタンパク質です。そのミオシンが,構造を変えながらアクチン繊維上を歩く姿をリアルタイムで観察することに成功しました(Kodera et al., Nature (2010))。 さらに,海外研究者との共同研究では,巻かれたDNAを直接観察することで,その性質を理解することに成功した(Brouns et al., ACS Nano (2018))ほか,身体の中の生体防御システムである免疫反応に関わる抗体分子が,抗原の密度によって異なる力の差を感知して抗原との結合時間を調整していることを明らかにしました(Preiner & Kodera et al.,Nature Communications (2014))。

 

 

高速AFMで生命現象の真の理解へ

高速AFMの高性能化に向けた研究開発と,生命科学への応用研究を続けていますが,まだ観ぬ生命現象が数多く残されています。高速AFMをさらに改良していくことで,さまざまな生体分子の機能や働く仕組みの解明に挑んでいきたいです。