Researcher’s Voice #1
松本 邦夫 教授
ナノ生命科学研究所/がん進展制御研究所/新学術創成研究機構

分野融合研究でHGFを紐解きがん研究を深める

 

松本 邦夫 教授

◆所 属:ナノ生命科学研究所/がん進展制御研究所/新学術創成研究機構

◆専 門:生物化学・医科学

腫瘍動態制御研究分野

 

細胞の増殖や生存を促すタンパク質「HGF(肝細胞増殖因子)」

HGFは,その受容体であるMETと結合することで,細胞の増殖や生存を促す生理活性タンパク質です。本来は,肝臓や神経組織の再生・修復を担っていますが,がん組織においては,がん細胞がHGFの作用を巧みに使うことで,がん細胞は増殖したり,たとえ抗がん剤にさらされてもがん細胞は生き延びる,つまり薬剤に対する耐性を獲得します。

 

 

 

活性化したHGFの作用のみを阻害する分子「環状ペプチド『HiP-8』」を発見!

東京大学大学院理学系研究科の菅裕明教授との融合研究で,活性化したHGFにのみ特異的に結合し,HGFの作用を阻害する環状ペプチド「HiP-8」を発見しました(Nature Chemical Biology, 2019)。

ナノ生命科学研究所の柴田幹大准教授との融合研究で,HiP-8が作用する様子を高速原子間力顕微鏡で観察することにも成功しました。HiP-8がHGFに結合すると,HGFのダイナミックな動きが止まることを可視化しました。さらに,理化学研究所生命機能科学研究センターの渡辺恭良チームリーダーらと,放射性同位元素で標識したHiP-8をがんモデルマウスに投与することで,個体内のHGFが豊富ながん組織をPET(ポジトロン断層法)イメージングにより可視化できることを実証しました。

 

 

分野融合研究で新たな発見に

自分と専門の異なる異分野の研究者とお互いを尊重しながら一緒に研究に向き合うことで,これまでにない新しい発見につながることを実感しています。これからも融合研究に挑戦していきます。

 

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