金沢大学理工研究域機械工学系の宮嶋陽司教授、石川和宏教授、自然科学研究科機械科学専攻博士前期課程(研究当時)の巽 遼太、名古屋大学の高田尚記教授、兵庫県立大学の足立大樹教授らの研究グループは、金属 3D プリンタで作製したアルミニウム–鉄(Al–Fe)合金について、300℃以下の低温焼鈍(加熱)によって、電気・熱伝導率および機械的特性を同時に改善できることを明らかにしました。
レーザ粉末床溶融(Laser Powder Bed Fusion: L-PBF)法(※1)は、金属 3D プリンタ技術を応用し、複雑な形状の部材を短時間で造形できる革新的な製造法として注目されています。しかし、急速な冷却により過飽和固溶体が形成され高強度が実現されるものの、導電性の低下や残留応力(※2)が存在するという問題点がありました。
今回の研究では、比較的低温での焼鈍によるナノ析出(※3)制御により、電気伝導率を高めながら残留応力を緩和する新しい熱処理指針を提示しました。本研究成果は、電気伝導率を高めながら内部残留応力を除去する新しい熱処理指針が確立され、軽量構造部材や高効率放熱部品など、エネルギー効率向上に寄与する応用に加え、次世代モビリティ電子機器冷却技術の開発にもつながると期待されます。
本研究成果は、2025 年 11 月 14 日、Elsevier 社の国際誌『Journal of Materials Research and Technology』のオンライン版に先行掲載され、2025 年 11 月 18 日に正式掲載されました。

図:溶融池構造を示す光学顕微鏡像、および (c, d) それぞれに対応する結晶粒の様子。(a, c) は造形直後の試料、(b, d) は 300 ℃で長時間焼鈍した試料を示す。
【用語解説】
※1 レーザ粉末床溶融(L-PBF)法
金属粉末を 1 層ずつ敷き、レーザで選択的に溶融・凝固させる 3D プリンタ技術の一種。複雑形状・小ロット生産に適し、近年航空・医療分野でも注目されている技術。
※2 残留応力
造形・加工後に材料内部に残る見えない応力。変形や割れの原因となるため除去が重要。
※3 ナノ析出物(Al₆Fe)
母相中に析出する数 nm~数十 nm サイズの金属化合物。転位運動を阻害して強度を向上させるとともに、過飽和固溶原子を減らして導電性を高める。(1nm は 1mm の 100 万分の 1。)本研究では Al₆Fe がナノ析出物である。
ジャーナル名:Journal of Materials Research and Technology
関連情報
金沢大学 理工学域 機械工学類:https://www.se.kanazawa-u.ac.jp/mechanic
金沢大学 大学院 自然科学研究科:https://www.nst.kanazawa-u.ac.jp/