このたび、金沢大学、山梨大学、国立環境研究所の研究チームが中心となり、国内7つの大学・研究機関(東京大学、愛媛大学、東北大学、京都大学、北里大学、高知大学、国立医薬品食品衛生研究所)との共同研究グループが、「環境中における薬剤耐性と抗微生物剤の監視の枠組構築に向けた研究」に取り組むことになりました。この研究は、独立行政法人環境再生保全機構の令和7年度環境研究総合推進費・戦略的研究開発課題(SⅡ-12)に採択され、令和7年4月1日より始動しました。
本プロジェクトは、環境を介した薬剤耐性の拡散メカニズムを明らかにし、持続可能な監視体制を確立することを目的としています。
薬剤耐性(AMR)(※1)は、世界保健機関(WHO)が「世界の健康に対する10の脅威」の一つとして警鐘を鳴らす課題であり、特に環境を介した薬剤耐性の拡散は世界的な関心を集めています。近年、医療や畜産分野での薬剤耐性対策が進められる一方で、ヒト・動物の活動を通じて環境中に放出された薬剤耐性菌や抗微生物剤が、水や土壌を介して拡散する可能性が指摘されています。環境中での薬剤耐性の動態を定量的に把握することは、公衆衛生および生態系の保全にとって不可欠ですが、これまで包括的な監視体制は確立されていませんでした。本プロジェクトでは、ワンヘルス(One Health)(※2)の視点に立ち、公共用水域を中心に薬剤耐性の発生源から拡散経路、環境影響までを統合的に評価し、実効性のある監視指標と対策の基盤を構築します。
【採択課題の概要】
公募名:令和7年度環境研究総合推進費・戦略的研究開発(Ⅱ)
採択プロジェクト名:SⅡ-12「環境中における薬剤耐性と抗微生物剤の監視の枠組構築に向けた研究」
プロジェクトリーダー:本多 了(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系 教授)
研究期間:令和7年4月~令和10年3月
図:本研究の概念図
【用語解説】
※1:薬剤耐性(AMR)
薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)とは、細菌やウイルスなどの病原体が抗菌薬をはじめとする「抗微生物剤」に対して耐性を持ち、治療が効きにくくなる現象。これにより、通常の治療では感染症が治らなくなり、重症化や死亡のリスクが高まる可能性がある。
※2:ワンヘルス(One Health)
ヒト・動物・環境の健康が相互に密接に関係しているという考えに基づき、分野横断的なアプローチを通じて公衆衛生や生態系を保全する取り組みのこと。世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際獣疫事務局(WOAH)、国連環境計画(UNEP)などの国際機関が推進しており、薬剤耐性問題をはじめ、新興感染症などのグローバルな健康課題に対処するための重要な概念とされている。
【関連サイト】
・令和7年度環境研究総合推進費における新規課題の採択について(環境再生保全機構プレスリリース、令和7年3月14日)
・薬剤耐性(AMR)ワンヘルスプラットフォーム
研究者情報:本多 了