金沢大学医薬保健研究域薬学系の小川数馬教授と大学院医薬保健学総合研究科薬学専攻/日本学術振興会特別研究員(DC1)(次世代精鋭人材創発プロジェクト令和 4 年度採用選抜学生)の越後拓亮(博士課程 4 年)を中心とする研究グループは、α 線放出放射性核種アスタチン-211(211At)(※1)を用いた標的 α 線治療(※2)の治療効果をさらに高める新たな手法を開発しました。
本研究では、211At 標識 RGD ペプチド(※3)による治療で、がん免疫が誘導されることを確認しました。さらに、211At標識RGDペプチドと免疫チェックポイント阻害薬(※4)を併用することで、がん免疫の誘導が強化され、相乗的に治療効果が増強されることが明らかになりました。本成果は、標的 α 線治療と免疫療法を組み合わせた、次世代のがん治療法の実現に向けた大きな一歩になると期待されます。
本研究成果は、2025 年 8 月 6 日欧州核医学会が出版する国際誌『European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging』のオンライン版に掲載されました。

図 1:担がんマウスにおける治療の比較
【用語解説】
※1:アスタチン-211(211At)
α 線を放出する放射性核種で、高い細胞傷害性を示すことから、強力ながん治療効果が期待されている。
※2:標的α線治療
α線放出核種をがん細胞に集積させ、体内からがん細胞を殺傷する治療法。高精度かつ副作用の少ない治療が可能。
※3:RGDペプチド
アルギニン-グリシン-アスパラギン酸配列を含むペプチド。がんに発現するαvβ3インテグリンに結合し、がんへの薬剤送達に利用される。
※4:免疫チェックポイント阻害薬
免疫のブレーキを解除し、がんに対する免疫応答を強化する薬剤。抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体などがある。
ジャーナル名:European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging
研究者情報:小川 数馬