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Research NEWS

高性能合金膜をより簡便にレーザーを活用した新しい形成技術の開発に成功

理工研究域 機械工学系, 教授
宮嶋 陽司MIYAJIMA, Yoji

 金沢大学理工研究域機械工学系の宮嶋陽司教授、石川和宏教授、同大学院自然科学研究科機械科学専攻博士前期課程(研究当時)の箕輪大生、棚田大輔、インド工科大学ハイデラバード校の Pinaki Prasad Bhattacharjeek 教授、英国ストラスクライド大学の StephenM. Lyth 博士らの共同研究グループは、複数の純金属片を組み合わせた独自の回転ターゲットとパルスレーザー堆積法(※1)を用いることで、高価な合金ターゲットを使わずに、さまざまな材料の表面に高性能なハイエントロピー合金( ※2)薄膜を形成する新しい手法を開発しました。

 本手法は、レーザー照射によって叩き出された金属原子が、基板の表面に堆積するだけでなく、表面直下の内部にまで打ち込まれる(インプランテーション)ことで、薄膜を形成するというユニークな特徴を持ちます。これにより、基板材料と一体化した強固な機能性薄膜の作製が可能になります。

 従来のハイエントロピー合金薄膜の作製には、あらかじめ作製した高価な合金の塊(ターゲット)が必要でしたが、本研究で開発した手法は、安価な純金属を用いることで、コストを大幅に削減できます。さらに、成膜時の圧力を調整することで膜の厚さや深さを精密に制御できることも明らかにしました。

 これらの知見は、将来さまざまな工業製品の表面に、耐熱性、耐食性、ガスバリア性といった新たな機能を安価かつ簡便に付与する技術として、航空宇宙、自動車、エネルギー、医療デバイスなど幅広い産業分野への応用が期待されます。

 本研究成果は、2025 年 6 月 17 日に『Optics & Laser Technology』のオンライン版に先行掲載されました。なお、2025 年 12 月発行の印刷版に正式掲載される予定です。

 

 

図:レーザーを用いた成膜装置の概念図と、電子顕微鏡による断面観察(二次電子像:SEI および反射電子像:BEI)、組成分析(EDS mapping)による酸素(O)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の分布の様子(SEI 像の赤枠部分)。🄫2025 Miyajima, et al., Optics & Laser Technology

 

 

【用語解説】

※1:パルスレーザー堆積法(PLD 法)
 真空中でターゲットとなる材料に、非常に強力なパルス状のレーザー光を照射し、それにより叩き出されてプラズマ化した原子やイオンを、対向する基板に堆積させて薄膜を形成する技術。

※2:ハイエントロピー合金
 複数の構成元素をほぼ同じ割合(5~35%)で混ぜ合わせた新しい概念の合金。従来の合金では、微量にしか添加されなかった元素を主要元素として用いることで、高い強度や靭性、優れた耐熱性や耐食性など、既存の材料にはない特異な性質を示す。

 

 

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ジャーナル名:Optics & Laser Technology

研究者情報:宮嶋 陽司

 

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