賢い人工衛星を開発する
松田先生が取り組んでいるのは、宇宙で活躍する「賢い」人工衛星の開発。宇宙観測での科学データの自動抽出や、宇宙の環境変動に応じた制御などを行うことで、人工衛星が「自律的」に動作するシステムの開発を目指している。現在、地球の周りには何万もの人工衛星が飛翔し、情報通信や科学観測などのさまざまな目的で運用されている。しかし、過酷な宇宙環境での耐久性や信頼性を考えると、最新式のコンピュータや人工知能(AI)を搭載した人工衛星は、ほとんど存在しないという。そこで松田先生らは、宇宙環境を模擬した実験室を用いて、熱や放射線に対するコンピュータの耐久性を高めるとともに、金沢大学が30年以上にわたって蓄積してきた宇宙観測のデータをAIに学習させ、人工衛星に搭載可能なAIモデルの構築にも取り組んでいる。
金沢大学衛星2号機「IMPACT」への搭載を目指して
金沢大学では、2023年に人工衛星「こよう」の打ち上げに成功し、現在も運用を続けている。それに続く2号機となる人工衛星「IMPACT」への搭載を計画しているのが、松田先生が開発中のAIを搭載したコンピュータである。この新たなコンピュータでは、AIを活用して人工衛星を自律的に制御することや、膨大な科学観測データの知的処理の実現を目指している。松田先生は、金沢大学先端宇宙理工学研究センターの研究者や学生らと協力しながら、より多くの人工衛星で、より豊かな未来社会をつくるために開発を続けている。