HaKaSe+(ハカセプラス)選抜学生として、博士学位の取得を目指して研究に励む、人間社会環境研究科国際学専攻博士後期課程2年(取材当時)の松田成弘さんに、博士後期課程の魅力や研究のやりがいについてお聞きしました。
博士後期課程に進学された、きっかけを教えてください。
私は石川県出身ですが、学士課程時代は県外の私立大学に通っていました。海外の思想学や政治学に興味があったので、大学3年のときにイタリアの政治史、政治思想のゼミに参加しました。そのときに取り組んだのがイタリアの政治思想家であるマキアヴェッリの研究です。ゼミでの研究活動を通じて、「研究ってすごく楽しい」と感じたのが、大学院への進学を考えたきっかけです。国内のマキアヴェッリの研究者を調べているうちに、偶然、故郷にある金沢大学にもイタリアの政治思想の研究者がおられることを知りました。その方が現在の指導教員である石黒盛久先生です。石黒先生に大学院進学志望の手紙を出したところ、私を快く受け入れてくださったことが、博士前期課程から後期課程にまで至る、現在の研究につながっています。
(写真左は、指導教員の石黒盛久教授)
研究をしていて、楽しいと感じるのはどんなときですか?
私の研究対象は、イタリア・ルネサンス期の政治思想家であるニッコロ・マキアヴェッリです。マキアヴェッリが著した『君主論』という本は、現代でもビジネス書として紹介されるほど世界的に有名です。マキアヴェッリが亡くなってからおよそ500年経過した今でも、彼の思想は生き続けています。これまで多くの政治思想の研究者たちが個々の解釈を加えており、これらの論文を読みこむことは楽しいです。私自身も独自の視点を見つけるために、マキアヴェッリが生きた時代のイタリア語の文献を読み、彼の思想が生まれた時代背景を学ぶことを心掛けています。現在、日本国内では、マキアヴェッリの研究を行っている研究者はあまりいませんが、その方々とディスカッションを交わすことも非常に楽しいです。
HaKaSe+ではどのような支援が受けられますか?
まずは手厚い経済的支援が受けられます。進学前は、博士後期課程で研究を続けることは、経済的に大変だなと考えていました。そこで、博士前期課程在学中に、石黒先生から、博士後期課程に進学するのであればと、HaKaSe+を紹介いただきました。HaKaSe+では、授業料免除や奨励金など、十分な経済支援を受けられ、研究に集中できる環境を得ることができます。とても恵まれていると感じています。また、私は理系の宇宙やプログラミングにも興味があります。文理を問わず、他の専門分野の博士学生と交流できるプログラムが整備されていることもHaKaSe+の魅力です。
博士後期課程で身についたと感じるスキルはありますか?
日々の研究活動を通じて培った研究力はもちろんですが、それに加えて、さまざまなトラブルに対する対応力や、ストレスに対する忍耐力も身についたと感じています。例えば、学会発表では予想外の質問が飛んできます。また、イタリア留学中にはアクシデントにも直面しました。研究が思うように進まないこともあります。これらを自ら考えて解決するチカラは、博士後期課程で身についていると実感しています。また、イタリア語の語学スキルも着実に向上しています。
最後に将来の夢を聞かせてください。
将来的にはアカデミアに残り、大学などで教員として、研究を続けていければいいなと思っています。
マキアヴェッリの思想は、世界中で研究されており、本場はイタリアですが、アメリカ、ドイツ、イギリスなど、さまざまな国で学ばれています。また、ビジネス書にも引用されるなど、一般にも広く浸透しています。これからもさまざまな文献を読み重ね、私自身の解釈を論文として世界に発表し、これまで誰も指摘していない新たな視点を提供できるよう努めていきたいと思います。
※所属・学年・年次などはすべて取材当時のものです。ご了承ください。
(サイエンスライター・見寺 祐子)