令和2年度 金沢大学学位記・修了証書授与式 学長告辞

掲載日:2021-3-22
学長メッセージ

本日ここに,令和2年度の学位記・修了証書授与式を,新型コロナウイルスの感染拡大防止に配慮しながら,晴れてこうして挙行できますこと,会場の卒業生,修了生諸君と,そして同時中継画面の向こうに居られる,今日まで皆さんを支えてこられたご家族,保護者の方々と共に喜びたいと思います。卒業生,修了生の皆さん,おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

卒業生,修了生諸君は,人間力と専門性を磨き,自らの弛まぬ努力と研さんの積み重ねによってこの日を迎えられたものであり,大いにたたえ,改めて祝意を表します。本日は,日ごろから諸君を温かく時に厳しく見守り支えてこられたご両親やご家族,周囲の皆さんのお力添えと恩師の導きに,皆さんが改めて感謝する大切な機会でもあります。

さて,この1年間,新型コロナウイルスという目に見えない敵に翻弄され,大学の教育研究活動も,オンライン等を活用し万全の対策を講じながら進めてきた異例づくめの1年間でした。学術研究活動が制限されるさなかでの卒業論文や,修士・博士の学位論文のとりまとめで苦労されたのではないかと推察します。ワクチン接種が始まり,その未曽有の危機から脱し,日常生活をとりもどしつつありますが,その一方でこのコロナ禍によって世界はすべての面で大変革を遂げようとしています。日本の特色である集団主義に基づく,徐々に性能を高めることを基本とする持続的イノベーションではこの変革を乗り越えられません。ゲームチェンジを先導する,破壊的イノベーションこそが日本経済の閉塞感から脱却する鍵です。

この変化が激しい状況の中,社会に舟出する皆さんが,これからの長い人生航路を迷うことなく進め,金沢大学の卒業生,修了生として誇りを持って活躍するための心得,未来への道標を3つ申し上げ,はなむけとします。

第1は,「将来の大きな夢と希望を描き,しっかりとした人生の到達目標を定め,それに向かって弛まぬ努力を日々重ねる」ことです。金沢大学が皆さんに授けることができた専門知識やスキル,そして課題解決能力は,社会人として必要な基礎,専門人材として活躍するための専門基礎力,学問の基本です。

人生の節目,節目でその到達目標を少しずつ高く,大きくすることで,発展が期待でき,やがては大きな飛躍のチャンスが巡ってくるはずです。今までに身に付けた基礎力をベースに,学ぶべきはむしろこれからです。これからの皆さんの将来の成否を左右するのは,生涯,学び続ける気構えと継続的な努力です。

第2は,「自分の専門分野を広げ異分野に踏み出し,新しいことに果敢に挑戦する社会人を目指す」ことです。ビッグデータとAI,デジタルトランスフォーメーションDXなど新たな技術革新の波が,皆さんを取り巻く社会構造を急激に変革する勢いで押寄せています。

これからは異分野に踏み出す力が求められます!自分の専門分野と視野を徐々に広げ,単に周りと同調するのではなく,他の人とは違う,誰にも負けない尖った自分,個性を磨き続けていただきたい。失敗を恐れてはいけません。高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,経験に基礎をおく実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれるはずです。人生とは,自分を創り,夢を実現することです。

そして第3は,グローバルな人材として活躍するために,「人間力,特に社会を変革するイノベーション力を磨き続け,社会の一員,組織の中核を担うリーダーを目指す」ことです。人間的な魅力なくしてグループや組織を率いることはできません。十分な教養がないと,時には重要な選択,決定を誤る危険性すらあります。日本経済の閉塞感を打ち破るため,起業家精神,アントレプレナーシップによって新しい未来を切り拓くイノベーションを引き起こし,社会変革を先導する人材として成長してくれることを大いに期待します!

特に大学院修了生諸君にあっては,世界の発展を支える中核リーダーとしての役割が期待されています。進歩の激しい科学技術,そして現代社会の劇的な変化を積極的に受け入れ,変革とイノベーションを先導する能力,それがこれからのリーダーに求められる中核的な能力です。体力と精神的なタフネスを背景に,変革に適応できる人間力を磨くことが人生を極めるための解決策と私は信じます。

誰もが裕福で幸せな生活を営みたい!と願うのは当然です。豊かで安らぎのある社会の実現に向け,自分に何ができるか?自分の住むコミュニティにどんな貢献ができるか?社会のために,どんな役割が果たせるかを価値判断の中心に据え,立派な社会人に成長してほしい。長い人生航路の岐路に立ったとき,その価値観が決断の重要な道標となるはずです。

結びにあたり,諸君が健康で幸せな人生に恵まれ,金沢大学の卒業生,修了生であることに誇りを持ち続け,活躍をしてくれることを祈念し,告辞とします。

令和3年3月22日         

 金沢大学長 山崎 光悦

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