平成30年度 金沢大学学位記・修了証書授与式 学長告辞

本日ここに,平成30年度の学位記・修了証書授与式を挙行できますことを大変嬉しく思います。卒業生,修了生の皆さん,おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。ご臨席のご家族・保護者の方々には,これまでのご苦労に感謝と敬意を表し,併せてお慶びを申し上げます。

卒業生,修了生諸君は,人間力と専門性を磨き,学士課程にあっては4年間あるいは6年間,大学院課程にあっては修士号,博士号あるいは専門職の学位を得るまでの間,自らの弛まぬ努力と研さんの積み重ねによってこの日を迎えられたものであり,大いに讃え,あらためて祝意を表します。日ごろから諸君を支えてこられたご両親やご家族,周囲の皆さんのお力添えと恩師の導きに,本日は皆さんがあらためて感謝する大切な機会でもあります。皆さんには幸せな人生を送る権利があり,また今日まで自分を育んでくれた周囲と社会,そしてコミュニティに感謝し,幸福な生活を営む義務があります。さらに地域と国,そして世界への貢献を果たさねばなりません。

しかし,国内では次々に起こる大企業群の破綻によって,モノ造り大国であった日本の国際競争力が一段と低下し,少子高齢化問題をはじめ山積みする課題が眼前に迫り,わが国の経済は今なお長期展望がのぞめない厳しい状況が続いています。政府はようやく,労働市場を外国人に開放し,地方創生,地方大学の振興に真剣に向き合おうとしています。

この厳しい社会に舟出する皆さんが,これからの長い人生航路を迷うことなく進め,金沢大学の卒業生,修了生として誇りを持って活躍するための心得,未来への道標を3つ申し上げ,餞(はなむ)けとします。

第1は,「将来の大きな夢と希望を描き,しっかりとした人生の到達目標を定め,それに向かって弛まぬ努力を日々重ねる」ことです。

人生の節目,節目でその目標を少しずつ高く,大きくすることで,発展が期待でき,やがては大きな飛躍のチャンスが巡ってくるはずです。願わくば,社会やコミュニティに貢献できる目標,世界の諸課題に立ち向かう大きな目標を掲げ,チャレンジされることを期待します。

金沢大学が皆さんに授けることができた専門知識やスキル,そして課題解決能力と知恵は,これから皆さんが社会の荒波にもまれ,人生を切り拓いてゆく上で社会人として必要な基礎,専門人材として活躍するための専門基礎力,学問の基本です。

学ぶこと,学問することは,これで終了するのでは決してありません。今までに身に付けた基礎力をベースに,学ぶべきはむしろこれからです。生涯,学び続ける気構えと継続的な努力が,これからの皆さんの将来の成否を左右します。変わらぬ基礎を大切にしながらも,常に進化し続ける流行,最先端の知識とスキルを取り入れることも忘れてはなりません。

第2は,「自分の専門分野を広げ異分野に踏み出し,新しいことに果敢に挑戦する社会人を目指す」ことです。

皆さんを取り巻く社会の状況は,今,大きな変革期を迎えています。世界では,米国が先導する,全ての物をネットワークで結合してデータを得るIoT技術(Internet of Things)や,独国が進めるIndustry4.0,日本政府が掲げる超スマート社会Society5.0の実現も含め,新たな技術革新の波が社会全体を飲み込む勢いで伝播しつつあります。ビッグデータとAI,自動運転などによって,未来社会の実現に向けた新しいモノ造りやサービスの提供,新しいビジネスモデルが次々と生まれています。

自分の専門分野と視野を徐々に広げ,他の人とは違う,誰にも負けない自分を磨き続けていただきたい。それが,やがては皆さん自身の個性,他の人とは違う個別の強みを築く礎となるはずです。これからは異分野に踏み出す力が求められます!高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,経験に基礎をおく実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれるはずです。

若い君たちには無限の可能性,未来があるのです。自分を磨くために欠かせないのは,何事にも率先して挑戦する気構えです。失敗を恐れてはいけません。失敗こそが何事にも替え難い人生の最大の財産です。そこからいろいろな物が見えてくるはずです。そして皆さんを成功へと導いてくれます。人生とは,自分を創り,夢を実現することです。

そして第3は,グローバルな人材として活躍するために,「人間力,特に社会を変革するイノベーション力を磨き続け,社会の一員,組織の中核を担うリーダーを目指す」ことです。

もちろん,専門力は大切ですが,それだけでは自分が向かうべき大きな方向性を定めることはできませんし,人間的な魅力なくしてグループや組織を率いることはできません。十分な教養がないと時には重要な選択,決定を誤る危険性すらあります。「金沢大学<グローバル>スタンダード」(KUGS)に掲げる,「自己の立ち位置を知る」「自己を知り,自己を鍛える」「考え・価値観を表現する」「世界とつながる」,そして「未来の課題に取り組む」という5つの能力を,本学が送り出す全ての卒業生が備えることを実現するために,GS科目の教育をスタートさせました。GS科目群はそのいろいろな香り,味わいを皆さんが満遍なくテイスティングするための仕掛けです。皆さんも人間力を磨き続けてください。

世界を舞台に活躍したい諸君も,地域コミュニティに貢献したい諸君も,総合的な人間力とコミュニケーション力を鍛えることが大切です。国際コミュニケーション力をさらに磨き,交渉力を研ぎ澄ませてください。そして日本経済の閉塞感を打ち破るため,起業家精神,アントレプレナーシップによって新しい未来を切り拓く,社会変革を先導する人材として成長してくれることを大いに期待します!

特に大学院修了生諸君にあっては,世界の発展を支える中核リーダーとしての役割が期待されています。進歩の激しい科学技術,そして劇的な変化を遂げ続ける現代社会,変革とイノベーションでその変化に適応せねばなりません。常に求められる変革に追従,いや,先導できる能力,それがこれからのリーダーに求められる中核的な能力です。体力と精神的なタフネスを背景に,変革に適応できる人間力を磨くことが人生を極めるための解決策と私は信じます。

誰もが裕福で幸せな生活を営みたい!と願うのは当然です。しかし,自分や自分の家族だけが良くても,豊かで安らぎのある社会の実現,未来は望めません。常に人のために何ができるか?自分の住むコミュニティにどんな貢献ができるか?社会のためにどんな役割が果たせるかを価値判断の中心に据え,立派な社会人に成長してほしい。長い人生航路の岐路に立ったとき,その価値観が決断の重要な道標となるはずです。

皆さんの母校,金沢大学は,その存在感を世界に誇示し,地域の持続的な発展に貢献するため常に進化し続けています!国立大学の運営費交付金の3つの重点支援枠から,「重点支援③世界卓越型」を選択し,研究力強化に邁進しております。文部科学省が推進する「世界トップレベル研究拠点プログラム」(WPI)に採択されたナノ生命科学研究所に続き,ナノマテリアル研究所も昨年設立しました。国際通用性のある大学院教育の高度化と研究者養成の強化,新領域・融合分野形成,国際ネットワーク構築などを通して世界トップクラスの教育研究拠点の形成を目指しています。大学は引き続き「地域に愛され,世界に輝く金沢大学」の実現に向け努力します。今後は,金沢大学の応援団として本学の発展に支援をお願いします。

最後になりますが,皆さんと母校,金沢大学の関係はこれで終わるのではなく,むしろこれから始まるのです。専門分野の社会的,あるいは技術的な課題解決で困ったとき,人生の岐路に立ちその進路に迷ったとき,是非とも母校,恩師を訪ねてください。大学,研究室を介した先輩,後輩とのネットワーク,専門分野別の同窓会,そして金沢大学学友会など,同窓会ネットワークが仕事の上でも必ずや役に立つはずです。是非大切にしてください。

最後に,私の信条「心身を鍛え,人間力を磨き,社会に尽くせ!」を餞けとして贈ります。

諸君が健康で幸せな人生に恵まれ,金沢大学で学んだこと,金沢大学の卒業生,修了生であることに誇りを持ち続け,活躍をしてくれることを祈念し,告辞とします。

平成31年3月22日         

 金沢大学長 山崎 光悦

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