平成30年 学長年頭あいさつ

皆さん,新年明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。新しい年の年頭にあたり,一言ごあいさつを申し上げます。

私の学長職の任期はこの3月で第1期が終了し,4月より第2期2年間がスタートします。月日の経つのは早いもので金沢大学の改革のためのビジョンと計画の改定版「YAMAZAKIプラン2016」を策定して,はや2年が過ぎようとしております。教育に関する種々の改革や組織再編,研究力強化,国際化,先進医療と地域貢献,人事・ガバナンス改革など全ての項目において,皆さまの意見を丁寧にくみ上げながらも,金沢大学の新たな発展のための改革をさらに進めねばなりません。本年4月を目途に「YAMAZAKIプラン2018」(仮称)の策定作業を現在進めつつあります。

昨年は,北陸先端科学技術大学院大学との共同大学院の4月開設に向けた諸準備や学生募集が行われ,また理工学域のフロンティア工学類や生命理工学類の新設をはじめとする人間社会学域,理工学域における学類・コースの再編など,教育改革第一弾の計画が着実に進められました。今年はいよいよそれら改革の具体的な実施に取り掛かり,教育改革はその正念場を迎えます。着実な成果を生み出せますよう,教職員が一丸となって取り組まなければなりません。さらに入試改革の第一陣として「文系後期一括,理系後期一括」入試と理工学域3学類前期一括入試がいよいよ始まり,特に国際基幹教育院総合教育部に新たに144名の学生を初めて迎えますが,一年間掛けて彼らの希望を尊重しながら,学類配属を決めるプロセスを慎重に進めねばなりません。専門教育,大学院教育でもGS科目の設定や各種特別プログラムの取り組みが行われ,金沢大学ブランドの定着に向け着実な歩みを進めつつあります。教育に関する競争的資金の獲得では,厳しい競争の末,信州大学と従来の4大学との連携によるがん専門医療人材(がんプロフェショナル)養成プラン第3期の採択を勝ち取った医学系,附属病院の取り組みが特にうれしい出来事でした。また肝炎対策では世界で4番目,肝がんの分野での指定は世界初となる世界保健機構(WHO)の協力機関,コラボレーティングセンター(WHOCC)に指定されたことも大きな成果でした。

さらに,国際化,グローバル人材の育成では,スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)で実施する各種プロジェクトにより,ELP教員研修をはじめ,着実な成果を見せつつあります。外国人留学生数が638名に達し,海外留学支援として,トビタテ留学JAPAN日本代表プログラムでも第6期単独で24名が海外派遣枠を獲得し,全国の国公私立大学全体で3位,国立大学で2位を獲得しました。特に悲願であった大学の世界展開力強化事業では「日露をつなぐ未来共創リーダー育成プログラム」の採択を受け,昨年末には数班に分けてカザン連邦大学をはじめ,ロシア各地の連携協定大学・機関に新たな交流プログラム開発のため代表団を派遣しました。今月17日にはキックオフシンポジウムの開催も予定しております。さらに信州大学との共同で獲得した留学生就職促進プログラムの採択を受け,留学生就職支援に関する新たな取り組みも開始しております。

次に研究力強化での最大の成果は,超然プロジェクトの成果をもとに,関係者の努力により世界トップレベルの研究拠点プログラム(WPI)に見事採択されたことです。福間剛士教授を拠点長とする「ナノ生命科学研究所(NanoLSI)」を設置し,新学術領域「ナノプローブ生命科学分野」を樹立しようとする10年計画,まさしく日本を代表する研究プロジェクトです。主任研究者PIの皆様方,関係URA,研究推進部職員の並々ならぬ努力に改めて感謝します。この研究所の今後の発展,成果の創出を皆様と共に期待し,支援して参りたいと存じます。また科学研究費補助金においては一昨年に引続き,昨年も採択件数,採択金額のいずれにおいても過去最高の採択結果を記録したことも嬉しい成果でした。

地域連携・社会連携では,COC+事業や一般道での自律型自動運転自動車を利用した社会的実証実験の実施など多くの連携事業を推進しました。また能登町との「人づくり・海づくり協定」に基づき,理工学域の生命理工学類の教育研究のための能登キャンパス拠点の環境整備を平成31年3月完成を目指して推進いたしました。

キャンパス整備でも,昨年3月には新営中の学生留学生宿舎「北溟」の200室分が竣工しましたし,スポーツ施設整備ではHONDA ESTILO株式会社,金沢市との共同事業によりサッカーコート3面の人工芝ピッチの工事がほぼ完了しました。雪が解ける春にはその鮮やかなグリーンのピッチが皆さまの目に留まることと思います。

さてわが国の財政が逼迫し,少子高齢化や一極集中に起因する人口減少が加速する中,今,国立大学はかつて経験したことのない厳しい財政状況にさらされ,その存在価値が問われています。地方創生,地方大学の振興にようやく大学の運営,機能強化のための新しいプロジェクトを実践し,改革を着実に進めるには,地域自治体とより強固な連携体制をとる一方で,産学連携・社会貢献において,今までにもまして大規模かつ多数の共同研究やその社会実装に関する研究活動,研究成果のアウトリーチが必須です。世界では,全てのものをインターネットでつなぐIoTやビッグデータとAIなど数理データサイエンスをベースに第4次産業革命が原動力となって凄まじい勢いで技術革新が進行しており,未来社会のシステムに大変革をもたらそうとしています。日本社会の未来を担うことが期待できるイノベータ養成は,本学が取り組まなければならない大切なミッションの一つとして浮上してきています。世界をリードする研究成果をもって実施するグローバル人材育成のための先進的かつ効果的な教育,人材育成こそが,輝かしい日本の未来社会を切り開く鍵,礎となると私は信じます。その実現に向け一翼を担うべく,引き続き大胆な改革を,皆さん一人一人の力をお借りしながら,スピード感をもって着実に進め,新しい金沢大学を創ってまいりたいと覚悟を新たにしております。

新たに迎えた平成30年は,本学にとってさらなる大きな飛躍を目指す基盤を確立すると同時に,取り組んできた挑戦,そして改革を,新たな軌道に乗せる総仕上げの開始となる年と,私自身,静かに覚悟を新たにしております。

ご承知のとおり,平成28年度から始まった国立大学の第3期中期目標・中期計画期間中の機能強化のための3つの類型から,金沢大学は第3類型,世界と伍して卓越した教育研究を展開する大学,いわゆる「世界卓越型大学」を目指すことを選択しました。その方針に沿って,10年後,20年後の金沢大学のあるべき姿を見据え,一段高い目標を掲げ,現在全教職員が一丸となって世界をけん引する国際的な教育研究拠点の形成に努めているところです。財政面においても,今後大学運営は一層厳しい局面を迎えるものと予想されます。大学の財政健全化に心掛け,大学の英知を結集して,この難局を乗り越えねばなりません。

平成30年度概算要求では,本学が掲げる5つの重点戦略に沿った機能強化を実現するための要求を行っていますが,重点支援3の大学の枠組みにあっては,昨年同様基幹運営費交付金1.6%がグループ内の競争的資金としてカットされ,戦略・施策の評価に基づいて予算が措置されます。年末に通達された内示では,新学術創成研究機構の基幹経費化が認められ,招聘型RPや16ユニットの若手PIの人件費が基盤的な経費としてしっかりと措置されました。またナノイノベーション研究所構想や学類改組を軸とする世界を先導するイノベータ養成拠点の構築にもしっかりと人件費が措置されました。獲得できた予算を最大限に活用して,本学が目指す戦略と施策を着実に実施して目標を達成し,さらに高い外部評価を得る好循環につなげていく必要があります。これらは,全ての教職員の努力と英知を結集することでしか成し遂げられないものです。皆さんも覚悟を新たにし,共に取り組んでいただきたいと思います。

新たな学長任期2年間を目途に,教育改革では国際基幹教育院を中心とするKUGSを体現する教養教育を基盤に人間力を育む教育,アクティブ・ラーニング,自学自習を加速させます。グローバルサイエンスキャンパス(GSC),ジュニアドクター育成塾などをベースにしながら特別入試の開発にも注力せねばなりません。アントレプレナーシップ教育の実践をはじめ,専門GS科目,大学院GS科目の充実によってイノベーション人材養成にも力を入れます。本年4月の学類・コースの改組第一弾に引続き,「Next Challenge―教育組織等改革構想~Roadmap to 2020~」に示しましたとおり,医薬保健学域および,人間社会学域,理工学域の残りの学類・コースにあっても,ビッグデータ,AI,数理データサイエンスをはじめとする今日的な課題に対応した,学類やコースの再編,教育プログラムの刷新に向けた第2段の具体的な検討を進めます。また大学院教育の高度化と世界的なリーダー養成のためのダブルディグリープログラム(DDP),ジョイントディグリープログラム(JDP)の開発やチーム学校を支える人材養成のための新専攻設置に向けた取り組み,さらには隣接国立大学や公立・私立大学との連携による共同教育課程や共同専攻の設置も視野に入れた可能性の具体的な検討と,文部科学省との交渉も進めます。博士課程教育リーディングプログラムの後継事業として平成30年度より募集が開始されます「卓越大学院プログラム」への複数応募に向けた準備も加速させます。

研究力強化においては,WPIシフトによりバックアップ体制を構築して,ナノ生命科学研究所の運営,世界拠点の形成に最大限の努力を傾注します。その基盤となる新学術創成研究機構やがん進展制御研究所をはじめ,環日本海域環境研究センター,子どものこころの発達研究センター,研究域内センターなどを軸に,引き続きリサーチプロフェッサー制度・コンカレントアポイントメント制度やテニュア・トラック制度を最大限に活用しながら,本学に優位性のある研究をさらに強化する施策を継続することにより,異分野融合研究,新たな学問領域の創成,将来有望な若手研究者の育成を加速度的に推進してまいります。教員業績評価の着実な実施と処遇への反映についても着実に実施し,働きがいのある研究環境と処遇実現に努めてまいります。 

研究成果の社会実装と地域社会,国際社会への貢献では,革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)の着実な実施や先端製造技術開発推進センターの機能強化により新研究所の設立に向けての組織改革,外部資金獲得を目指します。そしてこれらを基盤にした地域イノベーションエコシステムの構築に努めます。また産学官連携活動を組織対組織による研究推進体制に全面的に改めるとともに,平成28年度に導入した共同研究講座・共同研究部門制度を有効に機能させながら,共同研究など民間からの研究開発資金導入を,政府が掲げるように現在の3倍以上に増やす目標を達成するため,あらゆる可能性を模索し,企業群等との新しい関係構築に努めてまいります。さらに研究支援体制では,URA組織の再編とIR機能の強化,先端科学・イノベーション推進機構の充実,総合技術部の創設と研究設備共用サポートセンターの実質化にも力を注いでまいります。

さらに,地域貢献の重要な一翼を担う附属病院については,その経営健全化を進めながら,臨床研究を推進し,臨床研究中核病院の指定を目指します。地域医療を支える北陸地域の中核病院として今日以上のプレゼンスを発揮できるよう,北陸臨床研究推進機構メンバーをはじめ,地域医療機関等との連携体制の強化を推進してまいります。

限られた時間内で全てを網羅的に示すことはできませんが,昨年採択された,女性研究者を支援するダイバーシティ研究環境実現イニシアティブも大切な取り組みです。サマータイム制をさらに進化させ,ワークライフバランス,働き方改革に教職員全員が取り組む年にもしてほしいと思います。

平成30年,金沢大学は,学域学類制移行期に次ぐ,大きな変革のときを迎えつつあります。今,大学が変わらねば,日本の再興,世界的な競争力の復活はあり得ません。この激動の時期を,皆さんの力を結集し,「皆が頑張る,地域に愛され,世界に輝く金沢大学」を教職員一人一人の努力で実現することこそが,この激動期を乗り越える原動力である,私はそう信じております。皆さん,今年も一年,共に頑張りましょう。

 

平成30年1月4日
金沢大学長 山崎 光悦

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