平成18年度 金沢大学入学宣誓式学長告辞

掲載日:2006-4-7
学長メッセージ

平成18年4月7日 金沢市観光会館

本日ここに1975名の新入生を迎え,平成18年度金沢大学入学宣誓式が挙行されましたこと,本学にとって大きな喜びとするところです。新入生の皆さんおめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。

さて,諸君が入学された金沢大学は,1862年の加賀藩種痘所を源流とし,1949年に当時の高等学校群を統合し,新制の国立大学として設立されました。以来,日本海側にある基幹大学として,我が国の高等教育と学術研究の発展に貢献してまいりましたが,55年の歴史を刻んだ2004年4月に国立大学法人へと移行いたしました。

国から離れた国立大学法人ですが,これの意味するところは,極めて公共性の高い教育と研究を,これまでと同様に国家的な立場で推進しつつも,その一方で,民間的な経営にある競争という市場性をもって運営する法人と言うことができましょう。

諸君はこのような本学に入学されました。これから学ぶキャンパスは,総合移転がほぼ完了した角間キャンパスと,再開発が進む宝町・鶴間キャンパスであり,それらは200ヘクタールを超える広大な敷地と全国でも有数の施設を誇っています。総合大学としての8つの学部は,今年度に薬剤師養成を目的に設置した薬学部・薬学科と医学部・医学科を6年制とし,その他の学部はすべて4年制を基本としています。大学院については,複数の学部を母体とし,学際と総合を特徴とする人間社会環境,自然科学,医学系の3研究科に加え,法務研究科等をもって構成されています。そして4年制の学士課程に大学院博士の前期2年を接続した6年一貫の教育を実施することで,教育重視の研究大学として高度専門職業人の養成を目論んでいるところです。

諸君はこのような大学で学ぶわけですが,「何のために何を学ぶか」,また「どのように学ぶか」について,真剣に考えていただきたいと存じます。諸君が選んだ学部や学科は,直接に職業資格に結びつくもの,あるいは専門職業人につながるもの,必ずしもそうでないもの等,さまざまでありましょう。そして今や,大学に学ぶ学生は,18才の標準的な学生に加えて,留学生,社会人のリカレント,生涯学習などと多様であり,それぞれ学ぶ目的も多様です。そのような中にあって,諸君は所属する学部・学科が何であれ,専門職業人となることが期待されていると言えましょう。そして,「何のために何を学ぶか」は,ただ単に専門職業人となるのではなく,社会にとって,また自分としてどのような専門職業人となることを目標とし,どんな仕事をしたいかであり,このようなモチベーションを持った学びが大切となるはずです。

法人化にあたって金沢大学憲章を制定いたしましたが,ここには本学で実施される教育が個性を活かした自学自習を基本としつつ,専門知識と課題探求能力,さらには国際感覚や倫理観を有する豊かな人間性を涵養することが謳われています。「どのように学ぶか」については,このような憲章の条文に照らすことができましょう。言うまでもなく,学問とは,受験の勉強のように正解を見つけることではありません。社会において複雑化する問題に対応するには,授業の内容を理解することで,必要な知識を自分のものとするとともに,論理的な思考や問題を解決する能力を養わなければなりません。世界的な競争にさらされる企業等が求める人材にあっては,多量の情報informationから必要なものを抽出しまとめ上げる能力や,知識knowledgeをベースに新しい考え方を創造する能力が必要であり,これがintelligenceと呼べるものです。

社会的通用性については次のように言えましょう。国際社会にあっては,人類が直面している深刻な課題を理解し,将来の地球に責任が持てる地球市民であらねばなりませんし,地域社会にあっては,将来の世代に対する責任を自覚した市民であることが問われましょう。さらに企業等にあっては,法令順守をもって社会的責任(CSR)を果たす組織の一員として,公共性と市場性にバランスのある職業人でなければなりません。法令順守なくして企業は存続しませんし,むしろ,社会的責任を積極的に進める経営が競争力の源泉となりつつある時代です。そして,国連が提唱するグローバル・コンパクトは,将来的に企業が果たすべき責任が,法令順守を超えた水準になることを示唆しています。

これから大学で学ぶ4年あるいは6年間は,これまでの初等・中等教育からの離脱であり,社会人となるための準備期間です。諸君に期待されるのは,幅広い教養と堅牢な専門に基づく問題解決能力であり,実行力とコミュニケーション能力であり,社会の規範に照らした倫理観です。諸君にあっては,本学での学びと金沢での生活を通して,理性と感性を高め,力強い自己を形成していただきたい。

 兼六園の桜の花も漸く開き,角間の山々や小立野の台地では草木が萌動し,諸君の今日の入学を歓迎しています。学術文化を継承し発展する学都・金沢において,総合性を個性とした国立大学法人金沢大学で学ぶことを誇りとし,充実した時を刻まれることを祈念し,告辞といたします。

平成18年4月7日
金沢大学長 林 勇二郎

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