令和5年度 金沢大学入学宣誓式 学長告辞

掲載日:2023-4-5
学長メッセージ

北陸にも本格的な春が到来しています。この佳き日に心晴れやかに入学宣誓式を迎えた新入生の皆さん,ご入学誠におめでとうございます。ただいま,学士課程1,855名,大学院課程807名,別科37名の入学許可を宣言いたしました。あわせて2,699名の新入生の皆さんをお迎えできますことは,金沢大学の最大の喜びです。ようこそ金沢大学へ。教職員一同を代表して,心より歓迎いたします。

新型コロナウィルス感染症は3年間に渡り,国内外の社会に多大な影響を与えてきました。本学へ入学された皆さんも高校生活や受験勉強などにおいて今まで経験をしたことがない,さまざまの困難があったと思います。それを乗り越え,こうして新たな一歩を踏み出そうとしています。見事に難関を突破して入学を果たされた皆さんのこれまでの日々の研鑽と努力に敬意を表します。その志を支えてこられましたご家族の皆さまにも心よりお慶び申しあげます。

現代社会は,気候変動,政治経済,食糧・飢餓,健康・感染症など多くの地球規模の課題があります。さらに,ロシアのウクライナへの軍事侵攻も加わり,国際情勢は,より不安定になっております。国内でもエネルギー・原材料価格の高騰によって経済や人々の暮らしに影響を及ぼしていることはご承知の通りです。こうした事態を目の当たりにして,皆さんがこれからの学生生活に対し,期待とともに不安な気持ちも抱くこともあると思います。金沢大学は皆さんに寄り添いながら,学びへの知的好奇心を満たし,世界に羽ばたくための環境を整えています。是非とも本学の充実した環境を活かし,積極的に挑戦してほしいと思います。大学としても,教職員一丸となって皆さんへ最大限のサポートを致します。大学で何を学ぶのか,ぜひ一緒に考えていきたいと思います。大きく社会構造や価値が様変わりしている今こそ,金沢大学での学びが将来のかけがえのない財産につながるはずです。

これから皆さんが学ぶ金沢大学は,加賀百万石の歴史と豊かな伝統文化が醸成された学都金沢という素晴らしい環境にあります。加賀藩彦三種痘所を源流とし,旧制第四高等学校等の前身校から受け継いだ百六十有余年の歴史と伝統を有しています。この金沢大学の学生となることを誇りとしてください。みずみずしい好奇心を持って高みを目指し,さまざまなことに挑戦してください。本学は,金沢大学憲章において「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を基本理念に掲げています。これに立脚した学士課程・大学院課程それぞれの育成人材像を「金沢大学<グローバル>スタンダード(KUGS)」として示しています。これらの修得を後押し,かつ専門分野を究める基盤を有しています。分野融合型のリベラルアーツ教育や科学・技術・工学・数学などのいわゆるSTEAM教育も強化しています。皆さんが社会の中核的リーダーである「金沢大学ブランド人材」として日本のみならず世界で活躍できるように積極的に支援します。

世界は,ウィズコロナからポストコロナへと行動様式が移りつつあります。様々な社会変革が大きく進む社会において,私から金沢大学で学ぶ3つのヒントをお話ししたいと思います。

まず,第一に「人との出会いを大切にしよう」です。

人は人から多くのことを学びます。熱意を持つ人との出会いは重要です。世界の「知」に広く開かれ,活気に溢れる金沢大学での出会いを大切にしてください。ぜひ,誠実な関心をもって,学内外のさまざまな方とコミュニケーションをとってください。一生の付き合いになる方にきっと巡り会えるでしょう。そのためにも相手とともに,自分自身にも関心を持つことが重要です。私自身も40年前に皆さんと同じく期待に胸躍らせて金沢大学に入学しました。金沢大学の学生時代の活動,友人との交流を通じて成長できたと感じます。40年経っても同級生,当時の仲間と交流があり,かけがえのない人生の宝となっています。3年間にわたる新型コロナウィルス感染症の影響により,対面にて話をする機会も大きく減りました。このようなときであるからこそ,お互いに膝をつきあわせた対話,何気ない雑談が重要だと感じます。金沢大学の学生生活のなかで,偶然の出会いが必然であった,と将来心から思えるような出会いがあることを願っています。

2つ目は「自分で考えてみよう」です。

高校時代までの学びでは,模範解答が準備されていたと思います。しかしながら,皆さんが将来生きていく社会では模範解答が用意されているわけではありません。実社会では答えがない,あるいは正解が一つとは限らないことも多いと思います。模範解答のない社会で,未来を切り拓いていくために,現在,さらに未来の課題を探求し,自ら問い,解を見出すことが大切です。仮説を立て,エビデンスをもって検証し,妥当性があるか,考え抜くことが重要です。これこそ大学教育の要のひとつです。金沢大学で学ぶ重要なポイントでもあります。学生生活のなかで,課題に向き合う経験を積み重ねることは,必ず皆さんの人生を支える財産となるはずです。現在の教科書はこれまでの先人が築いた知の結集といえます。目の前の事実や課題に対峙し,解につなげる努力を積み重ねることが未来の教科書につながると思います。次代を担う皆さんは,壁を乗り越える強い志を土台とした「人間力」と,あらゆる知を融合した「総合知」を身につけてください。自分こそが課題を解決し,より良き社会を創造するという気概や志を持ち,社会を切り拓いていって欲しいと願っています。志高く,未来の課題を探求し,その克服に貢献する知恵「未来知」により社会に貢献する人材に育つことを期待しています。明日からの教科書や未来のあるべき社会を構築するのは皆さんです。自分と未来は変えられる,そして未来は自分で創るものであるとお伝えします。そのためにも失敗をおそれず,まず一歩踏み出してください。失敗から学ぶこともたくさんあります。未来を切り開くためにも,考え,行動を起こすことこそ重要です。金沢大学では学生が自ら学び,育つ教育を進めています。自分で考え,行動することへの支援体制も強化しています。

3つ目は「他流試合をしよう」です。

皆さんには他人の釜の飯を食う,他流試合をする経験を金沢大学在学期間に持って欲しいと思います。異なる文化や環境に身を置く「他流試合」は皆さんをきっと成長させてくれます。ぜひ,他流試合をお勧めします。見える風景が変わってくると思います。私自身も海外での留学生活はとても印象的でした。多様な価値観も生まれ,多くの学びもありました。国内外のさまざまな環境の方々と協働することはとても重要です。多様なバックグランドを持つ方と接することにより,違った角度からの新鮮な視点が得られるように感じます。

ここで本学の研究環境についてその一端を紹介します。本学にはナノ生命科学研究所をはじめとする国際的水準の研究拠点を複数有しています。ナノ生命科学研究所は文部科学省の「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」事業として採択されています。これらの高度な研究力を基盤に,専門分野とともに学際的な知見を学び,課題の全体像を俯瞰的に見通す力を身につけてください。金沢大学には,そのための環境が整っています。

専門外の学び,自分にはない世界観や知見を持つ人との交流,そうした「他流試合」,「越境体験」に自ら積極的に踏み出してください。これらを通じて深い教養と人間力を身につけ,課題解決に貢献し,未来の新たな価値を創造してほしいと願っています。皆さんが「未来知」によりあるべき社会を先導する「金沢大学ブランド人材」となることを期待しています。

皆さんの前途には,洋々たる未来が開けています。本日の感激を心に刻み,志を高くもって,金沢大学での充実した学生生活を送ってください。ご入学,誠におめでとうございます。

令和5年4月4日         

 金沢大学長 和田 隆志

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