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Research NEWS

電子廃棄物から着想を得たリサイクル型新ハイエントロピー合金の開発に成功 ― 相分離による超微細粒と高強度化を同時実現 ―

理工研究域 機械工学系, 教授
宮嶋 陽司MIYAJIMA, Yoji

 金沢大学理工研究域機械工学系の宮嶋陽司教授、インド工科大学ハイデラバード校(IIT Hyderabad)の Pinaki Prasad Bhattacharjee 教授らの研究グループは、電子材料の廃棄物(e-waste)に含まれる、金属成分を積極的に活用できる「リサイクル型」合金設計法を提案し、その実証として新しい相分離型ハイエントロピー合金(Phase-SeparatedHigh Entropy Alloy:PS-HEA)の開発に成功しました。

 ハイエントロピー合金(HEA)(※1)は、複数の金属を均等に混ぜることで高い強度や耐久性を持つ次世代材料ですが、従来の HEA は高価な金属を含むため、実用化にはコスト面で課題がありました。本研究では、電子機器などのリサイクル過程で生じるスクラップ中の銅(Cu)を活用し、新たな合金を設計しました。この合金は、Cu を多く含む 2 種類の面心立方相(FCC1/FCC2)から成り、加工・熱処理によって 1 μm 以下の超微細組織と約 850 MPa の高い降伏強度を両立することを実証しました。

 本研究成果は、持続可能な資源循環社会に向けた低コスト・高性能構造材料設計に新たな方向性を示すもので、今後の環境配慮型ものづくりに大きな貢献が期待されます。

 本研究成果は、2025 年 10 月 1 日に『Journal of Alloys and Compounds』のオンライン版に先行掲載され、2025 年 10 月 15 日に正式掲載されました。

 

 

図:(a)Co–Cr–Fe–Mn–Ni 系合金(従来材)、(b)(Co–Cr–Fe–Mn–Ni)–Cu 系合金(本研究)。

 

 

【用語解説】

※1:ハイエントロピー合金(HEA)
 複数の構成元素をほぼ同じ割合(5~35%)で混ぜ合わせた新しい概念の合金。従来の合金では、微量にしか添加されなかった元素を主要元素として用いることで、高い強度や靭性、優れた耐熱性や耐食性など、既存の材料にはない特異な性質を示す。

 

 

プレスリリース

ジャーナル名:Journal of Alloys and Compounds

研究者情報:宮嶋 陽司

 

 

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