記録的な積雪を伴った厳しい冬が過ぎ、うららかな春になりました。晴れやかに入学宣誓式を迎えた新入生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。ただいま、学士課程1,974名、大学院課程867名、別科34名、あわせて2,875名の入学許可を宣言いたしました。ようこそ金沢大学へ。金沢大学を代表して、心より皆さんを歓迎いたします。皆さんは努力を積み重ね、難関を見事に突破しました。初志を貫徹し、今新たな一歩を踏み出そうとしていることに敬意を表します。その志を支えてこられましたご家族の皆さまにも心よりお慶び申し上げます。
皆さんが入学した金沢大学は164年の歴史と伝統をもつ総合研究大学です。金沢大学は江戸時代の文久2年(1862年)、加賀藩彦三種痘所の設置を淵源とします。旧制第四高等学校等の前身校からの伝統を受け継ぎ、その伝統を守りながら、革新を積極的に織り込む気風があります。金沢大学では、令和4年5月に金沢大学未来ビジョン「志」を公表しました。オール金沢大学で「未来知」により社会に貢献するという「志」を明記しました。「未来知」とは、現在、ならびに未来の課題を探求し、克服するための知恵です。未来の新たな価値を創造することにつながります。皆さんのワクワクする知的好奇心を高めながら、自ら学び、自ら育むことができる環境も整っております。専門性を積み上げることはもとより、文理医の分野融合型のリベラルアーツ教育も強化しております。幅広い視野、高い視座、複眼的な視点を涵養することにつながります。さらに、金沢大学では大学院での深い学びの環境も充実させております。論語の一節に、「知之者不如好之者、好之者不如楽之者(これを知る者は、これを好む者に如かず。これを好む者は、これを楽しむ者に如かず)」とあります。ぜひ、充実したキャンパス生活を楽しみながら、大きく成長してください。
金沢大学には研究大学として、ナノ生命科学研究所をはじめとする世界最高水準の研究拠点群があります。これらの世界レベルの研究力を礎に、専門分野とともに学際的にも広く知見を取り入れることができます。さらに総合大学ならではの様々な考え方をもつ学生、教員との出会いと学びが日常的にあります。社会構造や人々の価値観が大きく変化している今こそ、金沢大学での学びが将来のかけがえのない財産になるはずです。金沢大学で学んでよかったと心から思ってもらいたいと願っております。さらに、世界の中核的リーダーである「金沢大学ブランド人材」として日本、世界で活躍することを心より期待しております。自分の未来をデザインするのは皆さん自身です。そのために、私を始め教職員一丸となり最大限の支援をします。
現代社会において、少子化、災害対策など多くの課題が顕在化しております。国際的にも経済安全保障、紛争の拡大、エネルギー問題など懸念が顕在化しております。豊かな地球環境の存続は今や深刻な危機に直面しております。我々は国際社会の一員として、持続可能な未来に向け、何ができるか、常に問い、考え、解決策を実践し続ける必要があります。金沢大学では基本理念である「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を大切にしております。地域と世界に開かれた視野、視座、視点を涵養する上で、「国際が日常にある、日常が国際である」環境が重要です。そのためにも、多文化を理解する学びと寛容、共生する姿勢が不可欠です。本学では、全学を挙げて国際的な多文化共修を充実させております。特に学生の海外派遣、優秀な留学生の受入れを進めています。さらに、徹底した国際化・産学連携教育により、未来への新たな価値を創造する博士人材の育成を強化しております。皆さんが国際社会の一員として、金沢大学で学び、果敢に挑戦し、希望ある未来社会に貢献することを心より願っております。
令和6年能登半島地震ならびに令和6年奥能登豪雨から足掛け3年が過ぎました。被災された方々が一日も早く元の生活に戻られ、被災地が復興・再建を遂げることをご祈念申し上げます。金沢大学はアカデミア、公共財として貢献できることを常に考えております。特に能登地域が有している本質的な価値を守りながら、そこに新たな価値をどのように付加するか考えております。今後も被災地の再建・復興、地域と世界の発展に貢献していきます。その一環として、令和7年4月から「防災・復興人材特別プログラム」も新たに開設しております。皆さんも金沢大学の学生として、また社会の一員として、一緒に考え、行動していきましょう。
皆さんはこれから豊かな緑に包まれたキャンパスを持つ金沢大学で有意義な学生生活を過ごすことになります。是非楽しみにしてください。これから始まる金沢大学での学びについて私から三つのヒントをお話しいたします。
第一に「人との出会いを大切にする」ことです。
熱意を持つ人との多くの出会いはとても大切です。人は人から多くのことを学びます。金沢大学では、世界の「知」に広く開かれており、国際的な交流の場があります。思いがけない出会いやご縁が多くあることでしょう。偶然の出会いから一生の友人や恩師になる方にきっと巡り会えると思います。ぜひ、誠実な心をもって、活気に溢れる学内外の方と積極的に交流してください。あの時の偶然の出会いが必然であった、と将来心から思えるような出会いがあることを願っております。
第二に「自分で考える」ことです。
磨穿鉄硯(ませんてっけん)という言葉があります。強い意志をもち、自分で考え、学問にたゆまず励む重要性を言い表しております。大学での学びはこれまでとは大きく異なります。皆さんが将来活躍する社会では模範解答が用意されているわけではありません。変化の著しい実社会では答えがないことがあります。正解も一つとは限りません。たしかに急速に進化したAIを活用すれば、一定の解は得られると思います。しかしながらこれらの技術を活用しながら、最終判断を下すのは皆さん自身です。すなわち、AI時代であるからこそ、人の判断が一層重要となります。人でしかできないこと、皆さん自身でしか成し得ない人間的な能力や魅力に磨きをかけてください。そのためにも、仮説を立て、エビデンス(科学的根拠)をもって検証し、妥当性があるか、自分で考えて、考え抜くことです。これこそ大学での学びです。加えて、自分自身の専門性を高めるとともに、人としてのありよう、つまり人間性、品性を高めることも求められます。幸い、金沢大学は哲学の泰斗、鈴木大拙、西田幾多郎とのご縁もあります。当たり前を疑い、本質を追求し、そして人格を磨く絶好の学舎です。このような姿勢は必ずや皆さんの人生を支える財産となるはずです。自分と未来は変えられる、そして未来は自分で創るもの、とお伝えします。
第三は「他流試合をする」ことです。
他流試合、すなわち異なる文化や環境に身を置いてみてください。金沢大学では海外留学や海外研修はじめいろいろな学外の活動を後押ししております。インターンシップ等の企業との他流試合、ラボローテーションなど、研究での他流試合も強化しております。失敗を恐れず、まず一歩を踏み出してみましょう。見える風景が変わります。自分とは異なる世界観・文化・価値観を持つ人との交流は新たな発見に満ちているはずです。皆さんの魅力に磨きがかかります。他流試合を通じて、未来の新たな価値を創造する人材として大きく成長することを期待しております。
新入生の皆さん、本日の感激を忘れることなく、高い志、気概をもって、充実した学生生活を送ってください。私は人こそが財産、宝であると信じております。皆さんこそ社会の宝です。皆さんが、未来を切り拓き、世界で活躍するリーダーとして大きく成長されることを大いに期待しております。
ご入学、誠におめでとうございます。
令和8年4月3日 金沢大学長 和田 隆志
