第9回超然文学賞 結果発表・講評

受賞者が決定しました!おめでとうございます!

令和8(2026)年7月1日(水)から8月17日(月)の期間に募集しました「第9回超然文学賞」に御応募いただき,ありがとうございました。各部門の応募作品の中から,審査員による厳正な審査の結果,下記のとおり受賞者を決定しましたので,お知らせします。

 

小説部門

  氏名  作品名  所属学校・学年
最優秀賞 須藤 大賀 ふたつの水位 埼玉県立川越初雁高等学校 3年
優秀賞 井潟 春南 人間 石川県立金沢二水高等学校 3年
優秀賞 普神 唯衣 翡翠が海に流れていく 第一学院高等学校 養父校 金沢キャンパス 3年
佳作 宮嵜 洸羽 筏葛の馥郁よ 聖光学院高等学校 3年
佳作 齊田 晶 ルーちゃん、朝起きられなくなる。 金沢大学人間社会学域学校教育学類附属高等学校 3年
佳作 塚本 賢太郎 わが部屋を巡る吟行 愛知県立春日井南高等学校  2年

短歌部門

  氏名  作品名  所属学校・学年
最優秀賞 関谷 諒太 っていうのに 名古屋高等学校 3年
優秀賞 森田 知音 複数の夏 石川県立金沢錦丘高等学校 1年
優秀賞 東野 礼豊 ゆるしはじめる 名古屋高等学校 3年
佳作 石原 莞奈 GURUGURU 宮城県気仙沼高等学校 2年
佳作 峰 凛々花 骨。--未来の化石-- 成蹊高等学校 2年
佳作 柳原 萌々子 ほどく

神奈川県立光陵高等学校 3年

 
※優秀賞および佳作の記載順は学校が所在する都道府県コード番号順

講評

総評:傾向と対策と新機軸と

金沢大学人間社会研究域人文学系教授 佐藤文彦

 

 第9回超然文学賞は以上のように受賞作が決まりました。今回の応募総数は小説部門が27作、短歌部門が38作。短歌部門は2年連続で過去最多を更新しました。他方、小説部門では、所定の様式にのっとらず分量を超過した作品は選考から除外しました。審査委員はすべての作品に目を通し―その際、応募者の氏名・学校名・学年など、タイトルと作品以外の情報はすべて伏せられます―、審査に臨みます。その結果、小説部門も短歌部門も最優秀から佳作まで、全席を埋めることができました。以下では受賞作だけでなく、全体を通して言えること・言いたいことを記します。

 まずは小説部門から。

 

 去年の総評で私が『受賞作品集』に掲載される最優秀賞・優秀賞受賞作に共通する点として、「規定の枚数いっぱいまでは書いていない点」を挙げたからでしょうか、今年は紙幅に余裕を持たせた作品が目立ちました。また、もうひとつの共通点として「父親不在の家族の物語である点」を挙げたからでしょうか、今年も母と子、とくに母と娘の関係を描いた作品が目立ちました。前者については、みなさんが推敲を重ねた結果、最終的に整えられた形であると思われるので何ら問題ありません。だけど後者については、父親不在の母と娘の物語を書けば入賞に近づく、などということは決してありません。私含め、審査委員に高校生の子を持つ(父)親は複数いますが、あの一文は、応募作を読み、高校生にとって父親の存在感はこんなにも薄いのか、と改めて認識した私の印象、ひとつの傾向を記したまでで、ここから対策を導き出すとすれば、「じゃあひとつ、我こそは母と娘以外の家族の物語を書いてみようか」と思ってほしいところでした。いや、むしろ去年の私の総評がみなさんの創作意欲を掻き立てるとするならば、「目新しいもの、これまでにないタイプの作品を入れたい」「AI的予定調和を超えていくもの、規格外の作品により焦点を当てていきたい」という部分に注目してほしかったです。

 今回の審査委員会では、上位6作は比較的すんなり決まりました。そのあと、どの作品を『作品集』に載せるか、最優秀・優秀と佳作の線引きに多くの時間が割かれました。その詳細は里見先生の講評におまかせするとして、私としてはそれぞれに個性的な6作を選ぶことができたと自負しています。
 最優秀賞受賞作「ふたつの水位」は、7年前の双子の兄の死を抱え続ける高校生男子(とその母)の物語です。優秀賞受賞作「翡翠が海に流れていく」は、3年前の父の葬儀で泣けなかった女性が父との別れを経て一歩踏み出す物語です。もうひとつの優秀賞受賞作「人間」は、AIが唯一の友だった「私」が自殺を思いとどまり、日常の見方を改める物語です。高校生の日常が描かれるか否か、ファンタジー要素の有無など、3作に違いはあれど、共通するのは死を背景に生きる人間の姿が描かれている点です。こう書くとごく当たり前のように響きますが、佳作にとどまった「筏葛の馥郁よ」は父の死の扱いがぞんざいという指摘がありました。とはいえ本作がパプアニューギニアの現代史に取材した力作であることは間違いありません。もうふたつの佳作受賞作も、小説中に俳句を取り入れたり、筋よりも語りの巧さが抜群だったり、これまでにない傾向の作品です。逆にリアルな高校生の気づきや成長を丁寧に描いた(優等生的な)作品は今回、選に漏れました。2~3年前なら入賞しそうなタイプの作品でしたが、目新しさに乏しかったです。
 みなさんが過去の受賞作の傾向を分析し、対策を立ててくださるのは素晴らしいことです。だけどそれをなぞるのではなく、あなたにしか書けない新機軸を加えることも忘れないでください。

 

 続いて短歌部門について。

 

 審査委員会の進行は委員長の仕事なので、事前にすべての審査委員の評価表に目を通し、どういった手順で作品を絞り込むか、シナリオを作ります。その甲斐あって今回、7作までは私の予定通りに絞り込めました。が、問題はそこからでした。7作に絞った時点で私は、これらの作品をポイント制で点数化した結果を示しました。そして最高点の作品を最優秀賞に、最低点のものを選外に、と提案しましたが、結果的に最優秀も選外に漏れた作品も、ポイント通りにはなりませんでした。それが合議で行う審査の醍醐味というものです。
 個々の受賞作の講評は黒瀬先生におまかせするとして、上位7作まで残りながら入賞できなかった作品は、悪い意味で「小説的」という評価がつきまといました。15首を通して一貫した世界ができあがっているので物語的、つまり連作として読み応えはありますが、そこに短歌としての工夫はあるのか、日記や報告の延長線上ではないか、という指摘がありました。これは短歌に詳しくない私たちには新鮮な視点でした。

 最優秀賞も事前の審査で2位だった作品が逆転しました。上位2作ともに秀歌が多かったものの、優秀賞受賞作「複数の夏」収録の歌の作り方がワンパターンな点を黒瀬先生に指摘され、学内審査員も納得しました。それでも本作は夏の情景を詠む言葉選びのセンスが独特で、とりわけカタカナの使い方はわれわれ、おじさん・おばさんにもわかりやすかったです(別の言い方をすると、そうでない作品が多いので)。
 他方、最優秀賞受賞作「っていうのに」は、複数の学内審査員が最高得点を与えており、黒瀬先生の「打率が高い」という評価も首肯できました。もうひとつの優秀賞受賞作「ゆるしはじめる」や、佳作に入賞した作品含め、元気な歌、素直な歌が多いものも選ばれました。ただし今回は、応募作が多かった割に全体に低調との声が多くの審査員から聞かれました。過去の受賞作を勉強しすぎておとなしいとの声もありました。小説より短歌のほうが応募作が多かったのは第1回以来のことです。当時は12作しかなかったので、10年経たないうちに3倍以上の作品を集められたのは喜ばしい限りです。次に求めたいのは、小説同様、新機軸です。巧さに溺れず、あなたにしか詠めないものを読ませてほしいと期待しています。

 

小説部門 講評  審査委員:小説家 里見蘭

PDF(後日、掲載予定です。)

短歌部門 講評  審査委員:歌人 黒瀬珂瀾

PDF(後日、掲載予定です。)

表彰式

日時:令和8(2026)年10月24日(土)14:00~15:30

会場:金沢市内 

「超然特別入試」超然文学選抜

令和9年度入試出願期間:令和8(2026)年11月2日(月)~9日(月)

入学者選抜要項・募集要項等詳細はこちら

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