平成26年度 金沢大学学位記・修了証書授与式 学長告辞

掲載日:2015-3-23
学長メッセージ

本日ここに,平成26年度春季の学位記・修了証書授与式が挙行できますこと誠に慶賀に存じます。ただいま学士課程1,773名,及び大学院課程710名,専攻科26名の皆さんに学位記あるいは修了証書を授与いたしました。卒業生,修了生の皆さんおめでとうございます。金沢大学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。

ご家族・保護者の方々には,これまでのご苦労に感謝と敬意を表し,併せてお慶びを申し上げます。
卒業生,修了生諸君にとって,学位記を手にする喜びはひとしおでありましょう。人間力と専門性を磨き,学士課程にあっては4年間あるいは6年間,大学院課程にあっては修士号,博士号あるいは専門職の学位を得るまでの間,自らの弛まぬ努力と研鑽の積み重ねによって手にしたものであり,大いに讃え,改めて祝意を表します。金沢大学で学んだ誇りをいつまでも忘れることなく,今日の喜びを糧としてこれからも粘り強く努力を続けられ,大いに活躍されんことを心より願っております。

また同時に皆さんにお願いしたいのは,晴れて今日を迎えることができたのも,日ごろから諸君を支えてこられたご両親やご家族,周囲の皆さんのお力添えと,先輩や後輩との切磋琢磨する機会に恵まれたこと,そして恩師の導きによるものであり,それらがあなた方を磨き,支え,そして育て上げてくれたことに,改めて感謝し,喜びを分かち合っていただきたい。そうした周囲の支え,導きに応えてゆくには,今後,「社会の期待に応え,社会の役に立つこと,貢献すること」を価値判断,決断の中心に据え,立派な社会人に成長してほしい。皆さんには幸せな人生を送る権利があり,また今日まで自分を育んでくれた周囲と社会に感謝し,幸福になる義務があります。そして地域と国,さらに世界への貢献を果たさねばなりません。

さて東日本大震災から既に4年間が経過しましたが,私たちを取り巻く周囲の状況は,皆さんも十分に承知のとおり,今なお大変厳しいものがあります。福島第一原子力発電所の廃炉処理をはじめ大震災からの復旧・復興には,なお幾多の年月を要するでありましょう。また,我が国経済の長期展望は決して予断を許さず,もの造り大国であった日本の国際競争力の復活,少子高齢化問題の解決をはじめ山積する課題があります。そして世界に目を向ければ,資源・エネルギーの確保,人口と食糧問題,民族・宗教対立,地球温暖化と気候変動などの地球規模の多くの課題に直面しています。これらの諸課題の解決には,人類の英知を結集し,息の長い着実な取組みが必要であります。
この厳しい社会に舟出し,荒波にもまれながらも,諸君がこれからの長い人生航路を迷うことなく進め,金沢大学の卒業生,修了生として誇りを持って活躍するための,心得,未来への道標を3つ申し上げ,餞けとします。

その第1は,「将来の大きな夢,志と希望を持ち,人生の目標と計画を立てること」です。
単なる憧れ,叶わぬ夢ではなく,常にしっかりとした実現性のある着実な人生の目標を持つことです。そしてそれに向かって日々努力を重ねることです。人生の節目,節目でその目標を少しずつ高く,大きくすることで,躍進が期待できます。そうすることで,やがては大きな飛躍のチャンスが巡ってくるはずです。「私の能力はせいぜいこんなものだ!」なんて,自分自身を見くびらないでほしい。誰でもいろいろな素質,可能性を持っているものです。若い君たちには無限の可能性があるのです。まだまだ自分では気付いていない自己能力,素質を磨く機会,能力開発を通して,新しい世界が開けるかもしれません。自分を磨くために欠かせないのは,何事にも率先して挑戦する気構えです。そのためには,失敗を恐れてはいけません。失敗こそが何事にも替え難い人生の最大の財産です。失敗からいろいろな物が見えてくるようになるはずです。

第2は,「生涯学び続ける努力を継続すること,怠らないこと」です。
金沢大学が諸君に与えることができた専門知識やスキル,そして知恵はわずかではありますが,これから皆さんが社会の荒波にもまれ,生きていく上で必要な社会人としての基礎力,そしてこれから40年間,いや50年間腐ることのない専門基礎力,学問の基本です。
学ぶこと,学問することは,大学や大学院を終えたら,それで終了するのではありません。今までに学んだ基礎力をベースに,学ぶべきはむしろこれからであります。生涯学び続ける気構えと継続的な努力が,これからの皆さんの将来の成否を左右します。学問,専門分野は常に進歩を続けています。変わらぬ基礎を大切にしながらも,常に進化し続ける流行,先端の知識を取り入れることも忘れてはなりません。ご自分の専門知識,専門分野と視野を徐々に広げ,くるべきときに備えてください。他の人とは違う自分を見つけ,磨き続けていただきたい。それが,やがては皆さん自身の個性,強みとなるはずです。時には型破りでもいい。他の人や世間とは異なった常識ハズレが,新発見や革新へと皆さんを導いてくれます。異分野融合にこそ,革新,イノベーションの源泉であると私は信じます。

第3は,「グローバルな人材として活躍するために,人間力を磨き続けていただきたい。」
勿論,専門力は大切ですが,それだけで自分が向かうべき大きな方向性を定めることはできません。十分な教養がないと時には重要な選択を誤る危険性すらあります。世界を舞台に活躍し,世界との勝負に臨むには,総合的な人間力を鍛えることが大切です。まず国際コミュニケーション力をさらに磨き,そして交渉力を研ぎ澄ませてください。次に高度な専門性に裏打ちされた広い視野と創造力,そして実践力,それらが皆さんの未来を切り拓いてくれます。ときには第二の専門が必要な場面に出くわすかもしれません。一人で頑張っても達成できる成果には限界があります。異なる専門分野や能力を備えた仲間や先輩と協働することで,未踏の地に到達できる可能性が出てきます。中国の故事に寧ろ鶏口と為るも,牛後と為る事なかれ「鶏口牛後」とあります。大きな組織の一員で甘んずることなく,皆さんには是非未来のリーダーを目指してほしいと思っています。 そして社会の一員として,優しさと厳しさを合わせ持ち,他人の苦しみや悲しみが理解できる深みのある人間として成長していただきたい。

本学は,今年度「金沢大学〈グローバル〉スタンダード」を策定しました。これは,「自分の立ち位置を知る」「考えを表現する」「自分を鍛える」「未来を予測する」,そして「文化を背景に世界と繋がる」という5つの能力を,本学が送り出す全ての卒業生が備えていることを,今後,共通教育の目標とするものです。共通教育を通して,皆さんに体力と精神的な強さ,そして人間力を育成しようとするものです。
またご承知のように,昨年秋,金沢大学は文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援事業」SGUに採択されました。今後10年間をかけ,グローバル人材の育成のための教育改革とそのための徹底した国際化を進めます。研究力強化とガバナンス改革などと合わせ,金沢大学のプレゼンスを高めるため,全学教職員が一丸となってスピード感をもって取り組む所存,覚悟です。 引き続き「地域に愛され,世界に輝く金沢大学」の実現に向け努力することを約束します。皆さん,今後は,金沢大学の応援団として本学の発展にご支援をお願いします。

最後になりますが,皆さんと母校,金沢大学の関係はこれで終わるのではなく,むしろこれから始まるのです。これからも,専門分野の技術的な課題解決で困ったとき,人生の岐路に立ちその進路に迷ったとき,是非とも母校,恩師を訪ねてください。大学,研究室を介した先輩,後輩とのネットワーク,専門分野別の同窓会,そして金沢大学学友会など,同窓会ネットワークが仕事の上でも必ずや役に立つはずです。是非大切にしてください。
諸君が健康で幸せな人生に恵まれ,金沢大学の卒業生,修了生であることに誇りを持ち大いに活躍し,成功をおさめ,金沢大学の歴史に新たな1ページを刻む活躍をしてくれることを祈念し,告辞とします。

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