文理融合研究で『総合性』を発揮

今年四月の国立大学法人化から半年余りが過ぎた。北陸の雄,金沢大(金沢市)は,今の八学部を三つの学問領域に再編する「学域構想」や「北陸地区国立大学連合」などを矢継ぎ早に打ち出し,改革を進めてきた。今後も激しさを増す大学間競争の中で,「ミニ帝大」色を払しょくし,個性をどう磨いていくのか。「東アジアにおける知の拠点」を目指す林勇二郎学長に聞いた。

-大学の現状をどう考える。

「わが国の高等教育は国立大学に続いて公立大学の法人化も動き出し,混沌(こんとん)としている。文部科学省の21世紀COE(センター・オブ・エクセレント)や現代的教育ニーズ取組支援プログラムなどによって,国・公・私を交えた競争が仕掛けられている。これらの“外圧”を大学の魅力づくりに生かすには,大学側が自らの位置づけを明確にする必要がある」

「金沢大は大学憲章を制定し,『教育を重視した研究大学』という方向性を打ち出した。意思決定に関するトップダウンとボトムアップのシステムは,テーマを分けることによって機能しつつある。もっとも,法人運営が軌道に乗るにはもう少し時間がかかるだろう」

-八学部の教育組織を二〇〇八年から人間社会系,自然系,医薬系の三学域に再編する。その狙いは?

「あらゆる学問領域で問題が複雑化しており,その解決には従来の枠組みを超えた専門知識と能力が必要になっている。学部の壁を取り払い,基礎に根ざしながらも新しさを組み入れた幅広い専門の教育体制を整えることで,社会の要請と学生のニーズに応えたい」

「人間・社会系や自然系の学域では多様なコースを設置し,主専攻に加えて副専攻を学べる複数専門制を導入する。ゲノム医科学をベースとした高度化や,患者中心で人と人との心のつながりを大切にする全人的医療が求められる医薬系学域では医学,薬学,看護学などの教育を連携させて,質の高い人材を養成したい」

-大学院研究科を横断する「フロンティア科学研究機構」を,どう位置づけている。

「基礎研究と実践研究との距離は急速に接近している。ナノテク材料や遺伝子治療などの開発においては,基礎研究をベースに実用を目指す探索型研究が主流となり,新たな研究領域が芽生え始めた。科学技術が将来の地球や人類に対して責任を持って発展するためには,産学連携や知財管理,さらには文系理系にまたがる研究こそ重要になる。フロンティア科学研究機構は,本学の新たな総合性を引き出すだろう」

-そのほかの工夫は?

「北陸地区国立大学連合の事業として,富山大や福井大などとの双方向遠隔授業を二〇〇五年度から開始する。また昨年十月から,石川県内にある十九の大学や短大による『いしかわシティカレッジ』が県庁跡地を共通キャンパスとして始まっている。立教大との『ビジネス・クリエイト工房』は,両大学の知的資源を生かした連携事業として期待される。これらの協調的競争を進め,これからも北陸,さらには東アジアの知の拠点として役割を果たしたい」

(平成16年11月11日北陸中日新聞より転載)

 
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