平成19年 年頭挨拶

平成19年1月4日 事務局大会議室

「2007年問題」と言われてきた年がいよいよ始まります。戦後の我が国の発展を支えてきた団塊の世代の大量退職と,それを補いきれない少子化は,大学全入という事態を招き,人材の質・量両面での低下が危惧されます。一方,世界の人口が増加の一途をたどる中,グローバル化が進む国際社会は,人口移動を伴う複雑な様相を呈しています。とりわけ北東アジアを中心とした東アジアは,経済成長および人口増加が顕著です。このような地域にあっては,職業人,学生といった人材のみならず,それまで培ってきた技術までが国境を超え,新たな舞台が展開されようとしています。EU共同体では既に高等教育の広域連携が始まっています。東アジアにおいても共同体,さらにはアカデミア共同体の形成を模索する時機でしょう。

 国立大学が法人に移行して約3年が経過しました。この間,競争意識を高め,個性を求めることで,自主自律的な運営が軌道に乗りつつあります。そして,国公私のイコール・フィッティングは,高等教育の世界に新たな活力を生み出そうとしています。しかし,中期目標・計画にある運営交付金の削減ルールの変更は,大学法人法の根幹に触れることになりましたし,市場性や競争による教育研究活動の活性化は,ともすれば国立大学の本質を失いかねない危うさを孕んでいます。さらに,特別会計制度の廃止は,地方大学の問題や附属病院問題など,個々の法人の深刻な実態を浮きぼりにしています。
法人化4年目で実施される暫定評価は,健全な根拠法のもとで,国立大学法人の第2期中期目標・計画につなげていくためにも,極めて重要な意味を持つことになるでしょう。

 高等教育のグランドデザインは,中教審答申「新時代の大学院教育」と「第3期科学技術基本計画」を受けて,大学院教育の実質化と卓越した教育研究拠点の形成を柱としています。平成19年度概算では,前者に大学院教育実質化プログラムが,後者にグローバルCOEプログラムが新たに措置されています。また,若手人材の育成が両者に共通の重点課題とされており,これについては4月に始まる新職階制をベースとしたうえで,准教授や助教に対するテニュアトラックの導入が進められようとしています。

このような状況の中で,本学が中期目標・計画の目玉とする「学域・学類構想」が,平成20年度実施に向けてスタートします。3つの学域と16の学類には,基礎に根ざしながらも新しい専門分野が教育組織として組み込まれています。一定期間の教育のあと進路を決める経過選択の制度は,学生の主体性の尊重であり,学類での専門コアカリキュラムと副専攻制は,基礎と幅広い専門の修得により柔軟で創造型の教育を提供しようとしています。すなわち,「学域・学類構想」は,本学が「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を実現する上での第一歩であり,そのためにも社会の要請と学生のニーズに応えて行かねばなりません。

国立大学法人金沢大学は,日本海側さらには北東アジアの拠点的な総合大学として,2007年問題という内憂とグローバル化の外患に立ち向かい,さらなる改革を進めていくことになるでしょう。そこでは,アメリカの神学者,R.ニーバーの言葉「変えることが出来ないことを受け入れる平静さ,変えるべきことを変える勇気,そして両者を識別する知恵」が問われています。
全学を挙げてこの事に取り組むことを期して,年頭の挨拶といたします。

平成19年1月4日
金沢大学長 林 勇二郎

  • 平成19年 年頭挨拶(動画)[学内]
Pocket
LINEで送る