学生のための大学を目指して

グローバル化の進む国際社会にあって,世界の国々は持続可能な発展,文化の創造と多様性の維持,次世代を担う人材の育成などに向けて協調性を深め,同時に自立度を高めつつあります。

このように大きく変容する世界情勢の中で,社会のための大学の役割はいよいよ大きく,金沢大学にあっては,「地域と世界に開かれた教育重視の研究大学」を大学憲章の基本に掲げています。そしてこの目標に向けて,2008年に現在の8学部は3学域・16学類へと大きく姿を変えようとしています。

現代社会が抱える複雑な問題の解決には,従来の学問領域の枠組みを超えた幅広い知識と能力が求められています。学域・学類の構想は学部の壁を取り払うことで,基礎に根ざしながらも新しさを取り込んだ教育の体制を整え,社会の要請や学生のニーズに応えようとするものです。

学生募集の単位は学類です。人間社会学域と理工学域では,それぞれ募集人数がより大きくなった6つの学類で学生を受け入れることになります。学生諸君はまず方向だけを定めて自由度の高い学類に入学し,一定期間の共通教育と専門基礎教育を受けた後,自分の進みたい分野・コースを選んでいくことになります。医薬保健学域の4つの学類はもともと専門性が強いため,入学時に進路が決められることになりますが,コメディカル教育という連携したカリキュラムで学ぶことで,質の高い医療従事者の養成が期待されます。

人材育成が大学の社会に対する最大の責任であるとすれば,「社会のための大学」は「学生のための大学」でもあります。学域・学類の教育システムでは教職員が全力を挙げて学生を支援することになりますが,主役はあくまでも学生諸君です。諸君には,どのような専門を選択し,どのような進路へ踏み出すかなど,自ら考え,自ら学び,自ら行動することが問われることになります。

「新風文化の扉は開かれ」は金沢大学の校歌の一節です。金沢大学は東アジアのアカデミアの拠点として,世界に向けて情報を発信してきましたが,情報を新風として文化を創り出していくのは諸君の役割です。意欲ある諸君らが新生・金沢大学の扉をたたくことを期待しています。

林 勇二郎

プロフィール/金沢大学長 林 勇二郎(はやしゆうじろう) 1942年1月,金沢市生まれ。1970年3月,東京工業大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士課程修了。金沢大学講師,金沢大学助教授,金沢大学教授,パデュー大学客員教授などを歴任。1997年,金沢大学工学部長,1999年9月に金沢大学長に就任,2005年10月から日本学術会議会員。趣味はスキー,野菜づくり。

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