平成26年 学長年頭あいさつ

2014年1月6日 大会議室

新年おめでとうございます。

「新しき 年のはじめに かくしこそ 千歳をかねて 楽しきをつめ」。

これは古今和歌集にある詠み人知らずの歌です。「千年の繁栄を思い描き,楽しいことを重ねて行こう」と呼びかけています。そこには何の寓意もなく,実にストレートですがすがしく,まことに初春を言寿ぐ気持ちがあふれ出ています。

東日本大震災において津波の被害が岩手県で最大だった陸前高田市をこの暮れに訪れました。そこでは沈下した地盤のかさ上げの大規模な工事が進行しており,たたずむ私には,これは従来の復旧・復興ではなく,そこに新しい文明の胎動を感じました。今年こそ,私たち一人一人に,「楽しきをつめ」とあるような年になりますようにと願っております。

昨年から,政府は,デフレからの早期脱却と経済再生を最優先課題とし,そのためのシナリオである「日本再生戦略」を策定し,3本の矢を強力に推し進めています。そこでは,人材力の強化や科学技術イノベーションの推進役として,国立大学改革・機能強化を位置付けています。これは,国立大学に対する国民や社会の強い期待の表れであり,我々金沢大学に身を置く全ての職員は,期待に応えるべく,大学改革を推進する決意を新たにしなければなりません。

政府は,平成25年度からの3年間を国立大学の改革加速期間と位置づけ,選択と集中による大学の研究力,国際化,教育力の飛躍的な強化を重点施策として,推進し始めました。昨年は,国立大学改革強化推進事業により「スーパー予防医科学」が採択されるとともに,革新的イノベーション創出プログラム拠点に選択され,また,センター・オブ・コミュニティ事業が採択されました。これらの事業は,現在力強く進められているところです。

暮れの12月24日には,平成26年度予算案が閣議決定されました。大学関連の予算を見ますと,国立大学の機能強化に重点を置く内容となっております。新たな経費として,学長のリーダーシップの下,国立大学改革プランの実行などに重点的に活用する特別枠や年俸制の本格導入に必要な経費が措置されており,政策課題に対応した大学改革の加速が求められています。また,国際化の強化に向け「スーパーグローバル大学事業」が新たに設けられました。30大学を選定し,グローバル化と研究力強化を重点的に支援するとしています。上海交通大学やタイムズなどの世界ランキングにおいてしかるべく評価されている本学は,必ず選定されるよう力を尽くさねばなりません。

国立大学改革の一環として,昨年夏には教員養成,工学,医学の3分野のミッションの再定義が終わり,今,残りの分野での再定義が進行しています。このような状況を踏まえ,本学においても研究力・教育力の一層の強化に向け,主体的に取り組むため,私は昨年10月に金沢大学改革検討委員会を招集し,全学合意のもとに,近未来を見据えた改革方針を取りまとめてきました。大学の教育・研究の実質に踏み込む,これまでになく強い改革であり,3月には最終報告をまとめ,時代を担う方々に改革のバトンを引き継ぎたいと願っています。

本年の事業について少しだけ申し上げます。3月には,6年制の薬学類と医学類では,最初の卒業生を送り出します。これで,6年前に移行した学域学類制は一旦の完成をみます。自学自習と経過選択性により,自立した有為な人材の育成を目指し発足した学域学類制は,教育研究組織のユニークかつ先進的な改革モデル事例として多くの大学から注目されています。その評価は学域・学類卒業生の社会での活躍にかかっており,この数年は金沢大学の将来における教育評価がなされる上で,極めて大切な年月となります。そのためにも,更なる改革をためらっている余裕はありません。

一昨年5月,私は金沢大学基金「創基150年記念留学生支援キャンペーン寄附募集」を宣言しました。これまでいただいた寄附金を財源とし,金沢大学創基150年記念留学生支援奨学金,プログラム「SAKIGAKE」,の新設にいたりました。毎年,日本人学生180名を諸外国に送り出し,また最終的には毎年180名の外国からの留学生に奨学支援を予定しております。これを梃子に,半数以上の学生が海外経験をし,教員一人に留学生一人という体制に一日でも早く至ればと願っております。キャンパスに居ながらにして異文化に日々触れることができる,名実ともに国際化した金沢大学が待たれます。

宝町地区では,長年の願いであり,金沢大学総合移転・再開発の集大成となる総合研究棟の新築と改修が完了します。附属病院の前に残る建物は取り壊され,広々とした空間に附属病院と医学類が整然と並ぶ日も間近となりました。1984年に総合移転の起工式が行われて以来29年。私の任期の最後の年に,金沢大学総合移転は名実ともに完了することとなり,感慨深いものがあります。

金沢大学創基150年記念事業では,2009年のシンボルマークの公募に始まり,「金沢大学誕生の地」及び「金沢大学発祥の地」の石碑の建立,アジア5大学学長フォーラム,記念式典・祝賀会,創基150年記念留学生支援キャンペーン寄附募集,創基150年史の刊行など,実に様々な記念行事が進められました。

4年前,金沢大学創基150年をささやかに,しかし心に残るように祝いましょう,と皆さんに語ったことが昨日のことのように思い出されます。事業の締めくくりとして,昨年11月2日,ホームカミングデーを機に,楷の木の植樹を 行いました。全ての行事が成功裏に成し遂げられたのも,皆様の努力,尽力のおかげと,心から感謝しております。いつの日か,楷の木の盛んなる紅葉の下に学生,職員,市民の皆さんが集う姿を夢見ております。

学問の 実りあれかし 楷新樹

これまでの5年9ケ月で,種々の事業に着手し,軌道に乗り始めましたのも,皆さんのたゆまない努力と積極的な大学運営への参加の賜物と感謝しております。国立大学は,その機能により峻別されると言う,かつてない激動の時代を迎えています。このような時代だからこそ,今一度心新たに,6年前の学長就任時に掲げた5つの柱からなるビジョン,15年先の金沢大学の姿,「わが国ベスト10大学を目指すこと」,「世界的な教育研究の拠点となること」,「次世代の優秀な人材を育成すること」「リージョナル・センターとして機能すること」,そして「法人としての自主・自律的な運営を行うこと」を胸に刻み励みたく存じます。全ての職員が,「金沢大学があなたのために何をしてくれるかではなく,あなたが金沢大学のために何ができるか」の心を持って,大学の明日に向かって邁進しようではありませんか。

「東アジアの知の拠点」として地歩を固め,「社会のための大学」として地域の中心である金沢大学が,楷の木と共に,千歳をかねて成長することを期待し,また皆様の力強い参画をお願い申し上げ,年頭の挨拶とします。

平成26年1月6日

金沢大学長 中村信一

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