第4回超然文学賞 結果発表・講評

受賞者が決定しました!おめでとうございます!

令和3(2021)年7月1日(木)から8月20日(金)の期間に募集しました「第4回超然文学賞」に御応募いただき,ありがとうございました。各部門の応募作品の中から,審査員による厳正な審査の結果,下記のとおり受賞者を決定しましたので,お知らせします。

 

小説部門

  氏名  作品名  所属学校・学年
最優秀賞 寺田 舜 可惜夜の夢 小松市立高等学校         3年
優秀賞 堀 万里絵 真夏の缶ジュース 石川県立金沢錦丘高等学校     3年
優秀賞 冨藤 すず 硝子人間 大阪府立富田林高等学校      1年
佳作 前田 伶衣 不平等な二人 富山県立南砺福野高等学校     3年
佳作 西村 和人 その味は 富山県立南砺福野高等学校     1年
佳作 磯部 廉    ゴッホ量産型社会  長野県野沢北高等学校       3年

短歌部門

  氏名  作品名  所属学校・学年
最優秀賞 加藤 千晶 母の名 石川県立金沢錦丘高等学校     3年
優秀賞 岡  奎那 一方通行 渋谷教育学園渋谷高等学校     3年
優秀賞 渡邉 美愛 青春病 愛知県立旭丘高等学校       2年
佳作 山田 真滉   名古屋高等学校          1年
佳作 芳谷 優斗 チーズケーキの行列 名古屋高等学校          1年
佳作 片山 藍美 青の純度 鳥取県立鳥取東高等学校      3年
 

講評

総評 「描写」について

審査委員長:金沢大学人間社会研究域歴史言語文化学系 教授 杉山 欣也

 第4回超然文学賞は、以上のように受賞作が決まりました。

 応募点数は小説部門28作品、短歌部門23作品でした。昨年はそれぞれ15、14作品でしたから、大変な伸び率です。これは超然文学賞が4回目を迎え、知名度が高まってきたことに加え、昨年度はじめて実施された超然特別入試において人文学類に5名の合格者が出たことも影響していると思います。締め切り翌日にその数を聞いた私は一瞬ひるみましたが、これまで同様、審査委員全員が全作品を読み、審査委員会では1作品ずつ討議することを決断しました。審査委員の先生方には大変なご負担をおかけしましたが、納得の審査結果が出せたと自負しています。

 まず小説部門について。

 久美先生が講評でお書きになっているように、示し合わせたわけでもないのに応募作の傾向が似てくるのは何故なのでしょう。今回は「いじめや虐待に苦しむ主人公→その分身ともいうべき人の登場・対話」という展開を取る作品が多く、深刻な現実の反映だろうかと暗い気持ちになる一方、小説としてはその「分身」の類型化や「登場・対話」後の展開に手詰まりを感じたこともたしかです。また、冒頭に理念的・観念的なことを書いた段落を置く作品が増えました。最近では実用的な文章を中心に、最初に結論をおいて、そのあとに理由等を展開している文章が多くなっていますが、短編小説らしさという点ではどうでしょうか。

 これも例年の傾向ですが、状況を「説明」ではなく「描写」として示していく工夫が必要です。歴代の、そして今回も、受賞作はその部分に工夫がみられます。

 ひとつお手本となる例文を示しましょう。志賀直哉「小僧の神様」の冒頭近くにある以下のような段落です。

 

それは秋らしい柔らかな澄んだ陽ざしが、紺のだいぶはげ落ちた暖簾の下から静かに店先に差し込んでいる時だった。店には一人の客もない。帳場格子の中に座って退屈そうに巻煙草をふかしていた番頭が、火鉢の傍で新聞を読んでいる若い番頭にこんなふうに話しかけた。

 

 これだけで、季節、天気、時間、店内空間と人物配置、お店が暇な時間帯で店主も留守をしていることなどがわかります。そしてそれらの情報を伴って、店先に差し込む光を逆光として利用して1枚の写真のような情景が浮かび上がってきます。さらに言えば、最初の「それは」だけでこの情景がゆっくり動き出す予感があります。文章もリズミカルです。たとえばこんなことを考えながら小説を読むと、今後の創作に生かせるのではないでしょうか。

 創作のお手本は平素の読書の中にあります。今後応募を目指すみなさんは小説を書くだけでなく、より多くの優れた作品を読み、ストーリーだけでなく、その「描写」に学ぶよう、心がけてください。

 次に短歌部門について。

 「描写」という点で小説以上に洗練が必要とされるのが短歌です。31文字しか使えない制約の中で、どんな言葉を用い、なにを、どのように描写し、情景を読者の脳裏にほうふつとさせるか。大変に高度な表現行為が作者に要求されます。それは作者だけではなく、読者も一緒です。私は1首1首、息を詰めてその言葉を吟味し、自分の脳裏にどのような世界が浮かび上がってくるかを意識しながら読むようにしています。短歌に限らず、文芸作品は読者の脳裏に像を結ぶことによって完成する芸術です。しかも短歌には万葉集以来の蓄積があり、それらの世界が目の前の言葉に重ね合わされていきます。31文字でそれらを要求してくる短歌は私にとって呼吸困難を伴う作業です。その緊張を越えて浮かび上がる世界に、私はほっとため息をついたり、くすっとさせられたり、逆にやむにやまれぬ悲痛な思いを受け取ったり、あるいはそれを受け止め損なって審査の場で黒瀬先生ほか審査員の先生方に教えられたりしながら、皆さんの31文字を私自身の内部で完成させていきます。

 この酸欠状態のなかで優劣を決めるのは至難の作業ですが、私は最終的に15首全体を通して伝わる印象を最後に加味して判断しています。もちろん、これは素晴らしいと思える1首が、他の歌のイメージを補って余りあるという場合もあります。昨年度の総評で私は「15首というのはなかなか微妙な数字ではないか」と書きましたが、その印象は今年も変わりません。中だるみしたり、息切れしないようにするためには、普段からの鍛錬が必要となります。また現代短歌に限らず、古今の優れた作品を読み、自らの糧としていくことは、小説同様に必要となるでしょう。

 超然特別入試で5名の学生が入学したことを受け、金沢大学では共通教育課程に「文芸創作実践」という科目を設けました。久美先生・黒瀬先生にご登壇いただき、小説と短歌の実践的なレッスンを行っています。金沢大学は入学後もその才能の育成に責任を持つという意志の表れとお考えください。初年度となる今年度は定員をオーバーし、抽選が行われる人気科目となりました。文系だけでなく、理工、医薬系からも受講生が参加し、文芸創作好きの裾野の広さを実感しております。個人的には、さらなる授業展開を考えていかねば、と感じているところです。

 なお今回の受賞者には1年生が多く含まれています。この結果に満足せず、来年度以降も応募して、その成長ぶりを私たちに示してください。期待しています。

 

小説部門 講評   審査委員:小説家 久美 沙織

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短歌部門 講評   審査委員:歌人  黒瀬 珂瀾

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表彰式

日時:令和3(2021)年10月23日(土)14:00~15:15

会場:金沢市内 

 

「超然特別入試」超然文学選抜

令和4年度入試出願期間:令和3(2021)年11月1日(月)~8日(月)

入学者選抜要項・募集要項等詳細はこちら