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学域長挨拶

人間社会学域長 三浦 要

人間社会学域は,人文学類,法学類,経済学類,学校教育学類,地域創造学類,そして国際学類の6学類を擁し,人文科学,社会科学における伝統的な学問領域だけでなく,学際的・国際的視点から現代的課題を考究する領域にまで及ぶ幅広い教育・研究を行っています。

現在,AIやIoT,ビッグデータといった先端的技術を活用した時代に向かってわたしたちを取り巻く社会は大きく変わろうとしています。そして,近年,盛んに言われているように,そのような時代において目指される社会がSociety5.0と呼ばれているものです。それは,産業や社会生活へのこれらの技術の導入による新たな価値の創造を通じて,経済発展一辺倒ではなく,経済発展と社会的課題の解決とを両立させた,ひとりひとりの人間が中心となる新たなかたちの社会です。

では先端的技術を中心としたこのような時代や社会の変化に対して,人文科学,社会科学はどういった役割を果たすことができるのでしょうか。なるほど確かに,人文・社会科学系の学問の多くは,時代や社会の「ニーズ」に即応してすぐさま実利をもたらしてくれるわけではなく,科学技術と比べると実用性に欠ける面があると言われてもやむをえないところがあります。しかし,学問の価値を実際的利得だけではかることができないのは言うまでもありません。

まずもって人文科学や社会科学は,人間や集団,社会がどうあるかという客観的事実だけでなく,それらがどうあるべきかという規範をも語るものです。新たな先端科学技術を手段として社会的課題を解決しようとするとき,あるべき社会の姿や向かうべき方向を考究し示すのが人文科学・社会科学的知と言ってもよいでしょう。

また,アメリカの哲学者M.ヌスバウムは,「市民は,事実に基づく知識と論理だけでは彼らを取り巻く複雑な世界とうまく関わることはできません。これら二つの市民の能力と密接に関連している第三の能力は,物語的想像力とでも呼ぶべきものです」(『経済成長がすべてか』)と語っていましたが,人間や社会に関する事実の理解を踏まえながら,既存の知識や理論を相対化する批判的思考や想像力,多様な他者に対する共感力といったいわゆる人間的能力を陶冶することも,まさしく人文科学,社会科学の大切な役割です。

人間社会学域では,各専門領域で閉じた教育を行うのではなく,学域学類制により分野の垣根を越えて学域全体へと開いた教育を行うことで,各領域の専門的知識の深い学びと同時に,自己の関心に応じた人文・社会科学の基盤的知識や学際的知識・技法の幅広い主体的学びを可能とし,公共性や市民性につながる豊かな人間的能力をそなえた人材を養成し社会に輩出していきます。

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