はじめに

金沢大学がん進展制御研究所長 向 田 直 史
本研究所は,がんに関わる研究所としては文部科学省唯一の機関として,昭和42年に臨床研究部門を含む8研究部門制で設立され,その後順次整備を行い,10部門制となりました。平成9年度に3大部門制に拡大改組するとともに,新規抗がん治療法などの開発を目指す“分子標的薬剤開発センター”を設置しました。この間,本研究所では,がん転移に関わるタンパク分解酵素の発見,がんの病態成立に密接に関与しているケモカイン・アポトーシス・血管新生因子の機能解明を始めとした基礎研究に大きな成果を挙げるとともに,新規の抗がん剤の開発にも力を注いできました。
近年がん研究に対して,基礎研究の成果を診断・治療法の開発に結びつける努力が,一層強く求められています。本研究所におきましては,このような社会的要請に応えるべく,今日のがん診療において未解決な点が多い,“転移”“薬剤耐性”などの,がんの「悪性進展」過程の克服を目指した体制づくりの一環として,平成18年度に3大部門1センターから2大部門2センターへと改組いたしました。さらに平成22年4月には,基礎研究分野の角間地区への移転と軌を一にして,がん細胞の源である「がん幹細胞」とがん組織中の「微小環境」の実態解明を通して,“転移”“薬剤耐性”に代表されるがんの「悪性進展」過程克服を目指した「がんの細胞社会学の創出事業」を,文部科学省の特別経費にて開始いたしました。さらに,これらの研究を機動的に進めるために,「がん幹細胞研究プログラム」「がん微小環境研究プログラム」「がん分子標的探索プログラム」「がん分子標的医療開発プログラム」の4プログラム制へと改組いたしました。研究所の使命を一層明確にするために,平成23年4月より「金沢大学がん進展制御研究所」へと改称いたしました。
金沢大学全体が目標として掲げている「東アジアの知の拠点」形成の一環として,がんの「悪性進展」過程の国際的な研究拠点の形成を目指して,平成20年度よりがんの「悪性進展」過程に関わる共同研究を全国公募にて行ってきました。平成22年7月には「がんの転移・薬剤耐性に関わる先導的共同研究拠点」として文部科学省より認定され,平成23年4月より共同利用・共同研究拠点として活動を開始いたしました。
本研究所では,これまでにも臨床医から理工系出身者までの幅広い分野の研究者を結集して,転移・薬剤耐性の克服を目指す研究を推進してまいりました。共同利用・共同研究拠点の認定を契機に,さらに一層幅広い分野の研究者の連携のもと,がんの「悪性進展」過程の国際的な研究拠点の形成を目指すとともに,がんの「悪性進展」過程の克服に繋がる研究の推進に向けて,教職員一同取り組んでいます。





