テーマ「金沢大学への期待 先を見据えた大学改革」
山崎光悦学長 × 馳 浩 衆議院議員(平成27年9月13日)

山崎学長 お忙しいところ,ありがとうございます。本日の対談は,国立大学振興議員連盟を立ち上げていただきましたように,社会からの国立大学に対する期待が年々大きくなってきておりますので,先生からいろいろなご意見等を頂戴したいと思い,このような対談の機会を設けさせていただきました。本日はどうぞよろしくお願いいたします。taidan_hase1

山崎学長 国立大学は,今,大きな変革の時期を迎えていますが,先生から見て,地元金沢大学への期待はどのようなことでしょうか?

馳議員 最初に,国立大学振興議員連盟の設立は,むしろ我々文教族の中心からすれば「国立大学の学長がよく応じてくれた」というのが本音なのです。国立大学の学長は,あまり政治家とは接触しない,接点がない。また,政治家の方もお高くとまっていて,地元のアカデミアの代表である国立大学の学長と本音の部分で意見を出し合うということはしてこなかったわけで,今回の国立大学振興議員連盟の設立を機会に,国会に集まっていただき,政治の役割を理解していただくとともに国立大学の窮状をアピールしていただきたいと思っています。

金沢大学への期待について,金沢出身の議員として言わせてもらうと,国立大学なのだから「石川県を代表する大学」というよりも,石川県の“金沢で”日本を代表し世界と堂々と戦うことのできるアカデミックな人材を育成して欲しいということが一番目です。この“金沢で”というのには2つの意味があって,「石川県出身で」ということと「日本全国あるいは世界からも人材が集まって,この金沢で」ということです。世界トップレベルの大学と伍して行くことが出来るレベルになる,そのレベルが求心力を持つためには当然発信力も必要です。そのためには,やはり先生方が特定の分野において世界的レベルの研究者でなければならないと思います。

二番目は,やはり教育機関なので教職員が教育を通じて学生と深い人間関係を築いていただきたいということです。構築ができれば次の段階として,商工会議所,医師会,社会福祉法人,県市の教育委員会や他大学等との連携機関の基軸となっていただきたい。もうひとつ言えば,地元のベンチャー企業や金融関係とも連携し,その基軸となっていただきたい。当然,一義的には18歳から22歳までの学生を鍛えるというのが必要ですが,これからの国立大学という立場を考えると現職の教員が勉強したり,現職の銀行役員が大学の講師になったり,現職の報道機関の人事部長が大学の総務部長と定期的に話し合いの場を設けたり,現役の県庁健康福祉部長と副知事が大学と常にホットラインを通じて石川県政のシンクタンク機能を果たしたり,等々,総合的な国立大学の役割を果たしていってほしいと思います。また,そのような中で,国から方針が出ている競争的資金の獲得のために,情報収集,ビルドアップ,マネジメント能力を学長には是非期待したいと思います。

もうひとつ,三番目に当たるかもしれませんが,ベトナム・ホーチミン工科大学に行ったときに「金沢大学との連携」という記事がパンフレットやいろいろなところに書いてあって,大変嬉しくなりました。アセアン諸国や中国,韓国等の大学と,大学や教員,学生の間で交流がなされるということは,外交・安全保障の補完であって,非常に大きな意味を持っているということです。文部科学省もトビタテ留学Japanキャンペーンなど積極的に行っていますので,それに貢献していただき,受け入れと送り出しをやっていただきたいと思います。

そのような期待を地元の代議士として持っているということをお伝えします。

 

山崎学長 教育面では,本学が学域学類制に移行して7年経ちましたので,世の中のニーズに応じて学域学類制の見直しを始めました。平成30年度を目途にいくつかの新しい学類・コースを立ち上げようと考えています。具体的には,新しい分野である観光学に関する人材育成を始めたいと考えています。また,本学に水産学部・農学部はありませんが,生物・水産資源の開発の手助けができる人材の育成についても考えています。海での養殖には限界が見えているので,陸上で魚を育てるということを考えています。統計的に調べると中国では10年余りで淡水魚の人工飼育が20~30倍に増えています。人口13億人のタンパク源として肉だけでなく魚や野菜も必要ということです。日本も,食糧生産・安全保障という観点から育てる漁業に切り替えていく必要があると思います。本学には鳳珠郡能登町小木に臨海実験所があります。そこを本拠地として整備し,魚にワクチン接種するとか,そのワクチンの開発等,いろいろな研究が出来るものと思っています。これらの考えは「総合大学は金太郎アメだ」とよく言われるので「金沢らしいものはなんだろ?」と考えたことが発端です。

教育面では他に,共通教育改革にも取り組んでいるところです。

また,平成28年4月から教職大学院をスタートさせます。石川県教育委員会の力をお借りして,現職教諭を含めた学生に対し,実践的な教育の充実を図ってまいります。taidan_hase2

馳議員 教職大学院はしっかりと定着させていただきたい。意欲と能力のある学部生と,現職の中核的な20台後半~30台前半に,加えて40~50台の教諭も入れて良いのではないかと思います。それを実行するには,代用教員を計画的に現場に配置することが絶対的に必要です。しかし学校の現場では中核的な教諭ほど校長が離さないでしょう。そうではなくて,石川県教育委員会が音頭をとって地元の国立大学と連携して,制度として行っていくべきです。現職の教諭を教職大学院に出す以上は,安心して少なくとも10年間の定数改善計画の中で行っていくべきだというのが,従来からの私の主張です。石川県教育委員会は全国でも独特な「いしかわ師範塾」という,ある意味学部の時代から現場で鍛えていこうというやり方でやっているので,金沢大学と連携しながら中核的な人材を育てて行っていただきたい。石川県の,また金沢大学の50年100年の計にとって,素晴らしい人材が輩出されること期待しています。

山崎学長 そのことは当初から石川県教育委員会にお願いしていますし,課題です。大学に余裕ができれば,当然経験豊富な現職教諭を1~2名招いて講義や実習をしていただきたいと思います。そのほうが,若い学生や大学院生にとっては魅力的です。そのように行えるよう,引き続き努力したいと思っています。

先進予防医学研究科の共同大学院も来年度スタートします。長崎大学と千葉大学と本学との共同事業です。病気は,遺伝子でほとんど判断できるものと,生活環境・食生活でほとんど決まるものとに分かれます。単独の大学では難病症例は少ないですし,難病の診断,原因究明,治療法の研究もなかなかできない。それを3大学が共同大学院として実施するわけです。特徴的なのは,従来の大学院と違って,学位記に3大学の学長名が記載されること。Web講義や3大学間をまたいだ集中講義,また必要単位の半分以上(正確には他大学から各10単位以上)を本学以外の大学で修得させるといった体制になっています。

馳議員 国が求めているクロスアポイントメント制度※1を研究機関と行っていますか?

山崎学長 平成26年度後半にリサーチプロフェッサー制度※2を導入しました。これには3タイプあって,1つは海外の著名な研究者を例えば1~2ヶ月お招きする「招へい型」です。ノーベル賞候補者クラスの先生をお招きし,本学に種を植え付けてもらって研究の分野を広めようという狙いです。その他は,学内の教員で研究に専念する「登用型」,若手研究者を国際公募する「若手型」です。クロスアポイントメント制度はこの「招へい型」で“大学と大学”という形で既に行っています。

研究機関とはまだ行っていませんが,研究機関と行うことで研究の幅が広がりますし,レベルアップも期待できるので検討したいと考えています。また,企業とも行いたい。企業の開発部門と共同研究している研究室もありますので,そこの研究者を本学に例えば年間1/4程度来てもらうことなど,いろいろ考えているところです。

また,人事面での新しい取り組みもいくつか取り入れました。先程のリサーチプロフェッサー制度もそうですし,国からの要請が強かった年俸制もそうです。年俸制には業績給を導入しており,現在10%弱の教員に適用しています。

  ※1 クロスアポイントメント制度とは,常勤職員の身分で,大学や研究機関等の複数の機関に雇用されつつ,一定の従事割合により,それぞれの指揮命令系統の下に,複数の機関での研究等に従事し,複数の機関から給与の支払いを受けることができる制度。

  ※2 リサーチプロフェッサー制度とは,優れた研究力を有する教員を確保し,研究に専念し能力を最大限に発揮できる環境を整備する制度。

馳議員 特色ある研究を世界に伍して行うには,組織のスクラップ&ビルドが多少必要なのではないでしょうか。組織マネジメントは,反対意見もある中で決断せざるを得ないことも多いと思います。

国のほうでは,大学のガバナンス,学長の裁量権,理事配置の問題等を担当させていただいたのですが,そういう法改正等を受けて,学長は,学内を掌握しやすくなったのでしょうか。

山崎学長 本学は,研究費を切り出して研究力強化や人員配置等に充てるといった施策を国より先に行ってきました。それらの施策は,学長就任前から頭に描いていましたし,就任と同時に具体的な大学改革の行動計画である「YAMAZAKIプラン2014」を策定し,実行に移しているところです。

馳議員 石川県の産業と言えば繊維。また最近ではIT関係や電子部品等も強いです。こういった石川県特有の産業界との連携,共同研究,またそのための人材育成,さらには石川県の雇用にも貢献していく,というような石川県の成長戦略への貢献については,どのように考えていますか?

山崎学長 抜かりなくやらせていただいているつもりです。10年以上の実績がある大手企業もあり,そことは連携組織も構築され毎年数回の連絡会も行っています。本年度は10件の共同研究が同時進行しています。大学と企業の経営企画室が進捗管理をして,期待できる事業は強化,上手く進んでいない事業は廃止といった,アクティブにダイナミックにいろいろやらせていただいています。他の企業でも同じ方式をスタートさせました。他にももうひとつ,会社はそれほど大きくないのですが北陸には工作機械メーカーがいくつかあって,この分野の人材をしっかり育てたいと思っています。工作機械がものづくりの要です。工作機械メーカーと大学が連携していろいろやりたいと考えています。

馳議員 北陸で唯一の法科大学院はどうですか?

山崎学長 ご承知の通り,撤退する大学も出てきています。taidan_hase3本学の成績も振るいませんが,この危機的状況を打開すべくいろいろな手は打ってあります。奨学金制度の導入等の短期的なものと,撤退した大学の法学部生の獲得等の長期的なもの。大学の現場の意識も高まっていますし,全学を挙げて対応していきたいと思います。

馳議員 学生募集のことですが,国立大学であってももっと積極的にレベルの高い高校生をスカウトしても良いのではないか?そんな意欲があっても良いのではないかと思うのですが,どうですか?

山崎学長 レベルの高い高校生もたくさん本学に入学していますが,野心がない,大志を抱いていない学生が多く,男女問わず目標設定の低い学生が多いように感じます。卒業生には,立派な人がたくさんいますので,ロールモデルをいくつか示して目標設定をもっと上げさせようと考えています。

馳議員 それで言えば,金沢大学の附属学校がまさしくキャリア教育が出来る現場です。積極的に研究の現場を見せる,体験させる等,エリート教育的なことをやっても良いと思います。

山崎学長 附属学校は本学の特徴であり強みなので,積極的に活用を図っていきます。

馳議員 施設整備面はいかがですか?新制国立大学制度が発足し60年を過ぎて,建物は老朽化しています。また,留学生獲得の拠点としても,大学の施設設備の充実は重要だと思います。

山崎学長 留学生獲得に向けた取り組みとしては,現在,約100名対応の学生留学生宿舎「先魁」が角間キャンパスにありますが,今後は最終的に約1,200名に対応できるよう増設を考えています。その内の約200名分は平成28年度中に増やす計画です。今ある「先魁」もそうですが,日本人学生と外国人学生の混住型で,日常会話から英語を話す。いわゆるドミトリー文化を狙っています。

 また,北溟寮や白梅寮はキャンパスから離れており老朽化も進んでいるので,研修医や看護師の寮も含め,全ての学生寮について検討を始めました。ただし,土地取得の問題,資金の問題もありますので細部に渡りきちんと計画を立てながら着実に進めたいと思います。

大学の施設整備の充実は大変重要ですし,その充実に当たっては,国からの財政支援が不可欠であると考えています。

馳議員 外部資金獲得の計画はどうですか?

山崎学長 寄附金が随分少なくなって,私大に比べ大差がついています。税制面で優遇されればもう少し民間からの外部資金が獲得しやすくなるのではないかと思っています。もちろん,国からの支援は努力して獲得するつもりですが,億単位で増やそうとするとやはり民間資金が必要です。是非,税制優遇へのご尽力をお願いします。

馳議員 今年度のひとつの課題ととらえています。

馳議員 国全体を見ても少子化の影響は出てきています。まずは私学の方が先に厳しい局面になっていくと思われます。私学振興財団を軸にして統廃合プログラム等をやらざるを得ない状況になっていくのではないでしょうか。では国立大学法人はどうするのか?統廃合せざるを得なくなったときに,ちゃんと対応できるよう,ある程度視野に入れておく必要があるのではないかと思います。

山崎学長 統廃合によるリスクも考えられますので,いろいろな状況を見据えて対応したいと考えています。今は,近隣の大学や旧六大学(千葉大・新潟大・金沢大・岡山大・長崎大・熊本大)との連携強化を推進し,例えば,共同大学院の設置等,双方にメリットがある事業に取り組んでいます。

馳議員 国会議員が集まって地元の学長の意見を聞くということは必要なことです。今回のような機会を設けていただいて大変良かったです。先を見据えた大学改革に,一緒に取り組むことが出来るように,私も勉強しますので,どうぞよろしくお願いします。

山崎学長 第3期中期目標期間の後も“光り輝く金沢大学”であるよう,大学挙げて頑張りますので,引き続き,いろいろな視点からのご指摘や厳しいお言葉をお願いいたします。

本日はありがとうございました。